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キラーロボット開発反対に向けたベルリン・フォーラムは多国間WEB会議「デジタル民主主義の始まり」

佐藤仁学術研究員・著述家
ドイツ外相のハイコ・マース氏(写真:ロイター/アフロ)

 2020年4月1日から2日までWEB会議で自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)に関する国際会議ベルリン・フォーラムが開催されていた。政府やNGO団体などが集まり、ベルリンで開催される予定だったが新型コロナウィルスの影響でWEB会議での開催になった。

 自律型殺傷兵器とは、AI(人工知能)の発展によって、AIを搭載した兵器が人間の判断を介さないで標的や人間を攻撃してくることに対して多くのNGOや国が開発に反対している。今回のWEB会議にも63ヶ国から450人以上が参加していた。「キラーロボット」とも称される自律型殺傷兵器については、毎年、特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Conventional Weapons:CCW)締結国での会議でも議論されており、次回は2020年6月に予定されているおり、日本からも参加している。

 今回のベルリン・フォーラムWEB会議でも、自律型殺傷兵器が人間の判断を介さないで標的に対して武力攻撃を仕掛けることに対しる倫理、人間性の尊重の観点から国際間での条約で開発を禁止できないか、殺傷的な武力の行使における人間の役割の定義、そのような兵器の運用上の規範とフレームワークが争点になった。ベルリン・フォーラムではドイツの外務大臣のハイコ・マース氏もオンラインで「人間の生死をロボット兵器自身の判断で決める自律型殺傷兵器は、我々の倫理と人間の尊重の観点から超えてはならないレッドラインである」とオープニング時にコメントを寄せた。

 自律型殺傷兵器の開発については各国政府で政策や戦略が異なるため、足並みは揃っていない。そのような中で、NGOは開発の禁止を積極的に訴えている。全世界の151のNGOの集合体で自律型殺傷兵器の開発に反対しているのが「ストップ・キラー・ロボットキャンペーン」は、今回のフォーラムで以下の3つのコアとなる提案を提出していた。

1.自律型殺傷兵器の利用における人間の判断と関与が必ず入ること。

2.自律型殺傷兵器自身の判断による標的への攻撃を倫理的な観点から法律でも禁止すること。

3.全ての標的に対して攻撃をする際には、人間の判断とコントロールが必ず入ること。

Digital diplomacy begins

 ストップ・キラー・ロボットキャンペーンのコーディネーターも務めるヒューマン・ライツ・ウォッチのメアリー・ウェルハム氏は、今回のベルリン・フォーラムでのWEB会議を振り返って「このようなWEB会議でのフォーラムが国際条約成立に向けた国際的コミュニティを形成していきます。新型コロナウィルス感染拡大防止のために、外出が出来ない状況のなか、政府やNGOがオンライン会議を開催したことは画期的なことです。デジタル・ディプロマシー(デジタル民主主義)の始まりです(Digital diplomacy begins)。このようなデジタル民主主義は、マルチラテラル(多国間)の対話をこれからも継続していくために重要なことです。そしてそのようなデジタル民主主義がキラーロボットのような脅威から人間性を守ることへの大きな一歩となります」と語っていた。

 自律型殺傷兵器の開発禁止については、国の政府やNGOなどが毎年集まって議論している。今年は新型コロナウィルスの影響でベルリンに集まることはできなかったが、そのような状況でもWEB会議で63ヶ国が集まり議論することができた。自律型殺傷兵器、キラーロボットはまだ見ぬ新たな兵器であり、今後の国際安全保障体制にも大きな影響を与えかねない。今回、オンラインでの多国間会合を「デジタル民主主義」と称していたが、どのような形態であれ関係する国やNGOなどが議論を重ねていくことが重要である。

▼ドイツ外相のハイコ・マース氏はツイッターでもベルリン・フォーラムのオープニングリマークを伝えた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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