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アメリカ海軍、自律型潜水艦「CLAWS」開発へ:偶発的な発射による戦争への危惧も

佐藤仁学術研究員・著述家
(Boeing提供)

 アメリカ海軍はAI(人工知能)で自律的に作動するロボット潜水艦「CLAWS」を開発していることを明らかにした。AI搭載で人間の判断やコントロールなしで作動できる。アメリカ海軍研究局(The Office of Naval Research)が現在、ロボット潜水艦のプロジェクトを進めている。ロボット潜水艦はボーイングが開発しており、12の魚雷発射管が搭載されているが、潜水艦が作動するAIのアルゴリズムやシナリオの詳細な仕様は現時点では一切明らかにされていない。だが、人間の判断やコントロール無しで標的への攻撃が可能と報じられている。

「CLAWS」プロトタイプ(Boeing提供)
「CLAWS」プロトタイプ(Boeing提供)
(Boeing提供)
(Boeing提供)

 自律型走行の潜水艦は「CLAWS」が最初ではないが、存在している自律走行の潜水艦はAIで動作できる機能が限定されており、人間による遠隔での操作とリンクしている。標的への攻撃には人間の判断が必ず入るようになっている。だが「CLAWS」では従来の自律走行の潜水艦よりも高度なAIを搭載しており、人間の判断やコントロール無しで多くのことができる。「CLAWS」は2018年に、無人潜水艦として最初に紹介された。「CLAWS」の開発予算がいくらかは明らかにされていないが、2020年にはアメリカ海軍の予算は2600万ドル(約27億円)を予定している。

「偶発的な機雷発射によって戦争につながる危機もありうる」

 人間の判断を介さないでAIを搭載した兵器やロボット自身の判断で標的や人間を攻撃してくる兵器は、まだ実戦では導入されていないが、自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)やキラーロボットとして、倫理的、道徳的な観点から開発することにNGOや著名人が懸念を表明している。一方で、軍事分野においてもAIの活用は進められている。特にAIを搭載したロボットは3D業務(Dull:退屈、Dirty:汚い、Dangerous:危険)には人間よりも適している。

 今回のアメリカ海軍のロボット潜水艦「CLAWS」に対しても、カリフォルニア大学バークレイ校(UCB)のAI専門のスチュアート・ラッセル教授は「完全な自律型殺傷兵器となることは、兵器開発においても重要なフェーズになる。AIが判断して偶発的に発射された機雷によって、本格的な戦争につながる危機もありうる」と懸念を表明している。スチュアート・ラッセル教授は2017年に公開された「Slaughterbot(虐殺とロボットの造語)」というAIを搭載したミツバチ型の小さなロボット兵器が人間を襲ってくる動画でキラーロボットの脅威を訴えていた。

 人間の判断や意志を介さないで、AIが判断した偶発的な攻撃が国家間の戦争に発展するようになると従来の安全保障体制を大きく変える可能性もある。

▼自律型殺傷兵器「Slaughterbot」の脅威を伝える動画とスチュアート・ラッセル教授(2017年)

▼AIの将来についてTEDxで語るスチュアート・ラッセル教授

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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