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ロシア最大の検索エンジンYandex、完全自動運転のデリバリーロボットの試験運用を開始

佐藤仁学術研究員・著述家
(Yandex提供)

 ロシアで最大の検索エンジンYandexが2019年11月に、完全自動運転でデリバリーサービスを行うロボット「Yandex.Rover」の試験運転をモスクワの同社の本社内キャンパスで開始した。人間が歩くのと同じスピードで自動で走行し、障害物や人間を察知すると、それらを避けて走行できる。また昼間の走行試験だけでなく、夜間での走行試験も行う。同社では7000人以上の従業員がキャンパスと呼ばれる敷地内の複数の建物で働いているため、それらの従業員同士での配達などにもデリバリーロボットを活用していく予定。アメリカでは既に同様の自動運転のデリバリーサービスのロボットの試験が始まっている。

 Yandexのデリバリーサービスのロボットによる商用での配達日は明らかにされていないが、Yandexは検索エンジンだけでなく「Yandex.Eats」というデリバリーサービスも提供しており、出前での利用が期待されている。

 Googleのように世界規模で検索エンジンや動画(YouTube)のサービスを展開していないので、日本人にはほとんど馴染みがないYandexだが、ロシアでは最大の検索エンジンでロシアやロシアの周辺諸国では多く利用されている。検索エンジンを通じて、ロシア中から多くの情報や、あらゆるデータを収集しており、それらのデータを元に機械学習を強化し、人工知能(AI)の開発にも注力している。今回の完全自動運転のデリバリーサービスのロボットもその成果の1つ。

 AI技術の開発と、それらを活用したサービスではGoogle、Amazon、Facebookなどの企業を有するアメリカとBaidu、Alibabaなどの企業を有する中国が圧倒的に強い。だが、ロシアではプーチン大統領がAI技術の開発を強化することによってロシアの国力増進を目指していくことを明言しており、今後もロシアの企業から多くのAI技術を活用したサービスが登場してくるだろう。

▼Yandexが試験運用を開始したデリバリーサービスのロボット「Yandex.Rover」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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