元国防副長官ワーク氏・シュミット氏:AIでの米中競争を語る「データ蓄積で同盟国の協力が必要」
アメリカの元国防副長官のロバート・ワーク氏とGoogleの元CEOのエリック・シュミット氏は2019年11月に国家安全保障会議においてAI(人工知能)についてスピーチを行った。ワーク氏は「AI技術の開発と競争においても、中国と対峙するために、アメリカは同盟国と協力していかなければならない。特にデータや情報の蓄積における協力が重要だ。英国、EU、日本、カナダ、オーストラリアとの協力が必要になってくる」と語った。
アメリカの多くの有識者や軍関係者はAI技術の開発においては、中国の方がアメリカよりも圧倒的に優位であることを認めており、中国による軍事へのAI活用に対する脅威を抱いている。中国は共産主義体制の維持のためにも、中国のあらゆるデータや情報を収集して機械学習を通じてAI技術開発を強化してきた。その結果、AIの軍事への活用においても欧米を凌駕しており、そのことにアメリカは危機感を抱いている。
ワーク氏は「多くの人がAI技術においては、世界中でどこの国よりも大量のデータを保有している中国がアメリカや西側諸国よりも優位だと思っているようだが、同盟国が協力して各国でデータを収集して機械学習を強化していけばAI技術の向上につながり、中国のAI技術にも勝ることができる。中国とアメリカは戦略において、あらゆる面で対立しているが、AI技術での競争と支配力についてはどのような面での対立よりもクリティカルだ。AIは経済分野だけでなく、国家安全保障の点においても国力とその方向性を決定づける重要な要素だ。2017年に中国は2030年までにAI分野で世界のリーダーを目指すと主張した。アメリカも中国に対抗していくべき方針を出して、どのようにアメリカがAI分野において世界のリーダーシップを主導していくかを検討してきた。公共分野と民間分野でのAIの優位性は国家安全保障にもつながる」とコメント。
ワーク氏はGoogleの元CEOのエリック・シュミット氏とともに15のAIに関わるグループのコミッショナーを務めてきた。シュミット氏は「アメリカとは異なる価値観を持った手ごわく強い相手がいる。我々はアメリカがAI技術開発競争の領域において勝たなくてはならないということを確信することだ」と中国をけん制した。
もう1つの関心の高いアジェンダの1つが、AIの発展によって、登場が懸念されているキラーロボットと称される自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)の開発だ。人間の判断を介さないでAIを搭載したロボットや兵器自らが判断して標的の建物や人間に攻撃を行ってくるようになる。今回の会議でも中国がこのようなAIを搭載した兵器を開発していることが話題になっていた。ワーク氏は「インターネットの急速な発展によって、AI技術の開発も一気に進んできた。中国が新たなAI技術を活用して、戦争においても優位に立とうとしていることを国防総省も理解している」と懸念を表明した。シュミット氏は「アメリカは国益のためにも中国に対抗していかないといけない。スーパーコンピューター開発が米中の技術競争の最先端にある」とコメント。