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イタリア、ホロコースト生存者の終身上院議員へ1日200通以上の嫌がらせメール・ヘイトで警察が保護へ

佐藤仁学術研究員・著述家
Liliana Segre氏(写真:Shutterstock/アフロ)

ソーシャルメディアにも溢れる反ユダヤ主義

 イタリアの終身上院議員のLiliana Segre氏が毎日200通以上のメールやソーシャルメディアでのDMで反ユダヤ主義や殺害予告などのヘイトスピーチ、民族憎悪のメッセージを受け取っており、身の危険に及ぶことが懸念されることからイタリア警察の保護下に入った。Liliana Segre氏へのダイレクトなオンラインでの嫌がらせメールは1日に200通以上だが、ソーシャルメディアやネットには大量の彼女個人への攻撃、反ユダヤ主義に関わるヘイトスピーチが溢れている。極右でなくとも誰もが簡単に書き込みを行うことができるし、あっという間に拡散されていく。

 Liliana Segre氏は89歳で、ユダヤ系イタリア人で13歳の時にアウシュビッツに移送され、地獄を経験してきたが生還。戦後はイタリアでホロコーストの経験などを伝えていた。2018年にはイタリアの人種差別法制定80年を記念して終身上院議員に任命された。イタリアだけでなく欧米ではいまだに反ユダヤ主義は根強く、同氏のような有名人だけでなくソーシャルメディアやネットには大量の反ユダヤ主義の書き込みが溢れている。特に11月9日は1938年にドイツで「水晶の夜(クリスタルナハト)」と呼ばれるユダヤ人襲撃があった日で、メディアでクリスタルナハトを特集した番組やニュースを多く取り上げていることから、ネット上では多くの反ユダヤ主義の書き込みが増加する。

 イスラエルのイタリア大使のDror Eydar氏は自身のツイッターで「今でも欧州ではユダヤ人コミュニティは反ユダヤ主義の脅威に晒されており、89歳のホロコースト生存者のLiliana Segre氏へのヘイトスピーチと嫌がらせは、欧州の反ユダヤ主義のシンボルだ」と警鐘を鳴らしている。

▼イスラエルのイタリア大使も自身のツイッターで警鐘を鳴らしている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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