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EUによるGoogleへの検索広告の競争法違反の制裁金でAlphabet 29%減益

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

EUから3回目の制裁金で減益

 Alphabetは2019年4月29日、傘下のGoogleの2019年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。

 Alphabetの2018年第1四半期の連結売上高は前年同期比17%増の363億3900万ドル(約4兆円)で、純利益は29%減の66億5700万ドル(約8000円)だった。

 欧州連合(EU)から、ネット広告事業で欧州独占禁止法に違反したということで制裁金14億9000万ユーロ(1800億円)を科されていたが減益の要因。EUによるGoogleへの制裁金はこれで3回目。

 2017年6月にGoogleの検索結果でGoogleショッピングサイトが優先表示されていたことで24億2000万ユーロ(約3000億円)の制裁金。2018年7月にはAndroidスマホにGoogleアプリを抱き合わせ販売を要求していたことから43億4000万ユーロ(約5300億円)の制裁金が科されていた。2019年3月にGoogleが検索連動広告サービス「AdSense」で、検索結果に表示する広告において、支配的な立場を悪用してGoogleが競合他社を排除して14億9000万ユーロ(1800億円)の制裁金が科された。

 Googleの圧倒的な市場での支配力はEUにとっても監視と制裁金の対象となりうるが、検索エンジン、動画(YouTube)はGoogleに代わるプレーヤーがほとんどない。スマホではiPhone(Apple)があるが、世界規模でも見ても中国以外では検索と動画(YouTube)はGoogleが市場を支配しており、今後もGoogleの支配力は強化されていくだろう。

変わらず好調の動画、クラウド

 Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比17%増で361億6900万ドル。Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。モバイル向けの広告とYouTube、クラウドが絶好調なことも例年通りである。

 従来の広告依存によるGoogleの売上構造は変わっていないものの、以前は90%以上が広告の売上だった。最近では、Google Play、「Google Home」といったハードウェアなど広告以外の売上が増加している。年々広告以外の売上が増加しており、Googleの収益構造が着実に変わろうとしている。スンダー・ピチャイCEOもGoogle Home MiniとHubが好調であると今期のハード部門の業績を強調。

 「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。売上高は前年同期比13%増の1億7000万ドルだったが、営業損失は8億6800万ドルの赤字。投資コストも多大なことから、まだ赤字は続くだろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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