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「モノ作り」のメーカーから脱却したいApple:新たな収益源の確保として定額制の新サービス提供へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

iPhoneの売上減少で減収減益のApple

 Appleは2019年3月26日に、動画配信サービス「Apple TV+」、ニュースや雑誌が読み放題の「Apple News+」、ゲーム「Apple Arcade」、クレジットカード「Apple Card」など新サービスの提供開始を明らかにした。今回の新サービスで、Appleは毎月定額で売上(収入)が確保できるサブスクリプション(定額制)型のサービスとクレジット利用による手数料収入が入ってくるようになる。

 Appleとしては、今後もサービス分野に注力していきたいところだ。Appleは2019年1月に2019年Q1(2018年10~12月期)の業績発表を行った。売上高は前年同期比5%減の843億ドル(約9兆円)、純利益は0.5%減の199億7000万ドル(約2兆円)だった。10月~12月期は全世界でクリスマスシーズンだったが、世界規模でiPhoneの売れ行きが伸び悩み、減収減益となった。iPhone、iPad、Macなどの販売台数は公表しなくなり、売上のみの発表となったが、売上でも前年同期に比べるとiPhoneの大幅な減少が目立っている。

プロダクト別売上(Apple公開資料を元に作成)
プロダクト別売上(Apple公開資料を元に作成)

サービス分野で新たな収益源を確保したいApple

 それでもAppleにとって売上の約60%以上がiPhoneで、MacやiPad、アクセサリーなど「モノ」の売上が約88%である。AppleはいわゆるメーカーでありiPhone、Mac、iPadなど「モノ」(製品)が売上の柱だ。だが、そのiPhoneの売上が減少しつつあり、減収減益になってしまったAppleにとっては、新たな収益源の確保が必要であり、そのためにもサービス分野の開拓は重要である。

 iPhoneは高価であるため、一部のApple好きの顧客以外は世界規模でも買い替えは進んでいない。そのような古いiPhoneを利用している顧客にも、動画配信、ニュースや雑誌、ゲーム、クレジットカードなどを利用してもらうことによって、毎月コンスタントに収入を確保していきたいところだ。

 Appleもいつまでもメーカーとして「モノ作り」に収益源を依拠していられなくなってきている。新たなサブスクリプション(定額制)サービスの提供によって、収益構造の変化が求められている。

 一方で、動画配信サービスやゲーム、クレジットカードは既に参入している企業も多く、非常に競争が激しい分野である。Appleが後から参入しても成功する見込みがある訳ではない。果たして、Appleはメーカーから脱却し、新たなサービス分野で収入源を確保することができるだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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