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オーストラリア軍、キラーロボットと戦場における人間の役割を調査

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 オーストラリアの国防省では自律型兵器やキラーロボット、軍事ドローンが戦争で倫理的な行動をできるかどうかの調査・研究を行うことを明らかにしたと地元メディアが報じている。まだ現実には登場していないキラーロボットは、SFのような話だが、900万ドルの資金を投入して調査を行っていく。特に戦争における人間の判断について解明していく。キラーロボットの研究に900万ドルかけるのは世界最大規模。

 ニュー・サウス・ウェールズ大学の国防アカデミーの研究員のJai Galliott氏は「キラーロボットの開発は禁止されるべきだ。技術の発展ばかりで倫理面での議論が欠如している。多くの人が自律型兵器の禁止の条約や倫理面について語るが、実際の解決策は出てきていない」と語っている。

 オーストラリア軍では、攻撃の判断には必ず人間が入るという方針がある。しかし、多くの軍人らはコンピューターやAIの発展によって、AIが戦場での判断を支援してくれるようになってくると語っている。今回の調査プロジェクトでは、キラーロボットや自律型兵器に対して、倫理的な面から戦場における判断においての人間の役割を明確にしていく。

 Galliott氏は「人間のように判断できる倫理的な判断ができるロボットを作ることはできないと思う。軍人は倫理面での完全な規範を持っているわけではないが、攻撃に際しては適切な判断をすることができる。ロボットが攻撃をする時に戦闘員か市民かの判断ができるだろうか」と語っている。

 AI(人工知能)の発展と軍事への活用で、自律型殺傷兵器やキラーロボットの登場が懸念されており、国際社会で議論が進んでいる。人間の判断を介さないで、ロボット自身の判断で攻撃をしてくることが懸念されている。特に「人間が人間を殺す」という従来の戦争から「ロボット自身が判断してロボットが人間を殺す」という戦争の在り方が変わろうとしているが、倫理と哲学の側面からの議論は進んでいないので、新たな一歩になる可能性がある。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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