スウェーデンの博物館、ホロコースト経験者らとホログラムでインタラクティブに会話

スウェーデンの博物館に展示されたホログラム(USCショア財団提供)

 第2次大戦時にナチスドイツによって、600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯らが殺害された、いわゆるホロコースト。70年以上の時が経ち、ホロコーストの生存者らも年々減少し、さらに高齢化が進んで、当時の経験や思い出を語り継いでいくことができなくなっている。

 映画「シンドラーのリスト」の映画監督スティーブン・スピルバーグが寄付して創設された南カリフォルニア大学(USC)のショア財団ではホロコースト時代の生存者の証言のデジタル化やメディア化などの取組みを行っている。特に注目を集めているのが、ホロコースト生存者がホログラムや3Dで目の前に現れて、AIによってインタラクティブにホロコースト時代の体験について質問に答える仕組みだ。あたかも、目の前にホロコーストの生存者がいるようで、質問に対してリアルタイムに答えらえれる。ホロコーストの生存者らが高齢化しても、亡くなってからでも、ホログラムで登場して未来の世代にホロコーストを語り継いでいくことができる。南カリフォルニア大学ではこれを「Dimensions in Testimony」プロジェクトと呼んでいる。

「記憶を語る。ホロコーストの最後の目撃」

 このホログラムによるホロコースト生存者との対話が、スウェーデンの歴史博物館にも導入された。「記憶を語る。ホロコーストの最後の目撃(“Speaking Memories, The Last Witnesses of the Holocaust”)」と題された展示がスウェーデンのユダヤ文化機関の協力のもとで開始された。またスウェーデン歴史博物館では南カリフォルニア大学のショア財団にある55000以上の証言にもアクセスできるようになった。ホロコースト生存者には一人一人に物語がある。

スウェーデン歴史博物館での「記憶を語る。ホロコーストの最後の目撃」展示(USC提供)
スウェーデン歴史博物館での「記憶を語る。ホロコーストの最後の目撃」展示(USC提供)

 南カリフォルニア大学ショア財団のステファン・スミス氏は、ホロコースト生存者で、後にアメリカ軍の大将になったリトアニア出身のSidney Shachnow氏が「私は今でも当時の話をカメラの前で証言する勇気はない。私は苦痛と向き合うことがいまだに出来ない」と語っていたが、2013年になってようやくホロコースト当時の思い出や経験を語ってくれたと明らかにした。

 スミス氏はホロコースト生存者らは、当時の経験や思い出を決して忘れることはできないと語っている。だが、ホロコースト生存者も年々高齢化が進み、記憶も鈍くなり体力的にも語るのが困難になっている。そのため、彼らが元気なうちに多くの証言をデジタルで記録することによって、後世にもホロコーストの経験を語れる取組みが積極的に進められている。

スピルバーグ「ホロコースト生存者らが、当時の経験を語ることに注目することが大切」

 南カリフォルニア大学ショア財団を設立のために多額の寄付をした映画監督のスピルバーグ氏も「ホロコースト生存者らが、当時の経験を語ることに注目することが大切だ。彼らの経験は現代社会においても通じるものがある。我々はホロコースト生存者を支援し、二度とホロコーストのような悲惨な歴史を繰り返さないように、彼らの声に耳を傾けることが重要。21世紀の現在においても、人種差別、反ユダヤ主義、ヘイトスピーチが存在している」と語っていた。

「彼らの声を将来にわたって、インタラクティブに聞くことができる」

 スウェーデンのユダヤ文化機関のLizzie Oved Scheja氏は「技術の発展によって、未来の世代がホロコースト経験者らとインタラクティブに会話できるようになることは素晴らしい。ホロコースト生存者がこの世からいなくなってしまい、ホロコースト経験者が語り部として学校へ行かなくなり、当時の記録を本に書かなくなってから、我々は何ができるだろうか。ホログラムとAIの技術を活用することによって、ホロコースト経験者の目で見たこと、彼らの声を将来にわたって、インタラクティブに聞くことができる」とコメント。