ホロコースト生存者、3Dでインタラクティブに「いつの時代でも生存者と対話」米国オハイオの博物館
3Dでインタラクティブに生存者と対話
第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコーストだが、そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちは、現在でも証言者として、博物館などで当時の様子を学生らに語っている。だが彼らも高齢化が進んでいき、生存者の数も年々減少している。
技術の発達によって、ホロコースト生存者のインタビューと動く姿を撮影し、それらを3Dのホログラムで表現できるようになった。博物館を訪れた人たちと対話して、ホログラムが質問者の音声を認識して、音声で回答できる3Dの制作が進んでいる。現在、米国のイリノイ州にあるホロコースト博物館では13人のシカゴ周辺に在住しているホロコースト生存者のインタビューと撮影を行い3D化して、2017年10月から展示している。
「いつの時代になっても生存者の声が聞ける」
現在、ホロコーストの生存者たちの「記憶のデジタル化」を推進するために、生存者の記憶が明確で身体的に動ける間に、当時の様子をインタビューで撮影し、多くの質問に本人が答えて、ホログラムで後世に残していこうとする動きが進んでいる。米国のオハイオ州にあるメルツ・ユダヤ博物館でも、同様にホロコースト生存者の証言を3Dで映し出し、見学者からの質問にインタラクティブに回答できるホログラム展示を進めようとしている。
オハイオ州のユダヤ博物館でホログラムで回答するのは、ルーマニア出身のStanley Bernath氏で92歳。カリフォルニアのスタジオで100台以上のカメラで12時間にわたって撮影と質問への回答が行われた。Stanley Bernath氏は第2次大戦時にはオーストリアのマウントハウゼン強制収容所に収容されていた。収容所でナチスの守衛が食べ物を投げてくれて生き延びることができたといったホロコースト時代の思い出を3Dで語っている。
ホロコースト時代にユダヤ人を救ったシンドラーを描いた映画「シンドラーのリスト」の映画監督のスティーブン・スピルバーグが設立した南カリフォルニア大学のショア財団が、ホログラム化や人工知能(AI)による自動回答の技術提供を行っている。
オハイオ州のユダヤ博物館で「生存者の記憶プロジェクト」の責任者を務めるKen Liffman氏は「生存者が語る当時の思い出や記憶に対して、質問する子供たちは多くの情報とメッセージを得ることができる。Stanley Bernath氏があたかも目の前にいて、彼の悲惨な体験をインタラクティブに聞いて、教えてもらうことができて、教育的な価値も高い」と語っている。
ユダヤ博物館の館長のDahlia Fisher氏は「このプロジェクトでは生存者の証言がホログラムを通じて未来まで残る。いつの時代になっても、ホロコースト生存者の生きた声を聞くことができる」とコメントしている。