カンボジア、栄養不良の子どもを治療するウエハース食品を開発:ユニセフやフランス研究機関など
魚を原材料としてカンボジアで生産
ユニセフ(国連児童基金)、フランス開発研究所(IRD)、デンマークのコペンハーゲン大学とDanish Care Foodsは、カンボジア政府とともに、重度の急性栄養不良の子どもを治療するため、魚を原料とした新しいウエハース食品「ニュートリックス(Nutrix)」を開発した。プノンペンに「ニュートリックス」の製造拠点を設置。カンボジアの子どもを取り巻く栄養不良に対処するため、すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)の大規模な製造を行うと発表した。
カンボジアでは、子どもの約2.6 %が重度の急性栄養不良と診断されている。在宅での治療を基本とする栄養治療食(RUTF)が処方されており、これなしでは多くの子どもたちが入院する必要性が出てくる。しかし、調査によると、現在カンボジアの保健施設において提供されている既存の製品を利用している子どもは多くない。
カンボジアでは6万~9万人の子どもが栄養治療が必要
カンボジア政府は、スナック菓子に類似した、安価な栄養治療食「ニュートリックス」を提供することで、現地の保健施設を通じて、遠隔地の貧しいコミュニティで暮らす、重度の急性栄養不良の5歳未満児を治療することができるようになる。カンボジアでは、年間推定6万人から9万人の子どもが、栄養治療食を含む専門的な治療を必要としている。
ピーナツと乳製品を原料とする栄養治療食(RUTF)がカンボジアには多く輸入されているが 「ニュートリックス」の原料はカンボジアで調達しているため、生産費が20%抑えられる。また、カンボジアの子どもの口により合うようにしている。この新しい栄養治療食(RUTF)の治療を受ける子どもたちは、毎月保健スタッフが診察し、成長過程を記録・管理する。ユニセフのサポートの下、36の病院と100以上の保健センターで治療を受けた子どもの数はカンボジア全体で1604 人(2011年)から5576人(2017年)に増えた。
「年間25000人の急性栄養不良の子どもを治療、政府の目標を達成するための重要な一歩」
カンボジアのモム・ブンヘーン保健大臣は「この革新的な栄養治療食のカンボジアでの製造開始は、少なくとも年間25000人の重度の急性栄養不良の子どもを治療するという政府の目標を達成するための重要な一歩です。製造を開始すれば、重度の急性栄養不良を治療する食品が現地で入手できるようになります。過去5年間にわたり、多くのパートナーが本食品の開発に関わってきました。多くの重度の急性栄養不良の子どもに支援を届けられるようになることを期待しています」とコメント。
ユニセフ・東アジア太平洋地域事務所副代表のヴィヴァナ・ベルモンテ氏は「東アジアと太平洋地域では、年間500万人を超える5歳未満児が重度の急性栄養不良の影響を受けており、5歳未満の子どもの主な死亡原因となっています。重度の急性栄養不良をなくすことは困難を伴い、社会的、政治的意思が求められます。カンボジア政府がこの問題に優先的に取り組み、すべての場において治療を強化することは喜ばしいことです。カンボジアは本地域において2カ国目の、自国で独自のRUTFを製造する国となりました」と語っている。