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フランス、「黄色いベスト」運動の情報発信と拡散を支えているFacebook:ローカル情報が上位に表示

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 フランスで燃料税引き上げに対する抗議に端を発したデモ「黄色いベスト」運動が全土に拡大しており、その勢いは増すばかりだ。フランス政府は9万人の治安部隊を動員して厳戒態勢を敷いているが28万人以上がフランス全土でデモに参加しているという。

 この「黄色いベスト」運動の情報発信と拡散に大きな役割を果たしているのがSNSのFacebookだ。連日、フランスで報道される地元のニュースでも「黄色いベスト」運動は取り上げられている。またデモに参加する多くの市民が写真をその場でアップし、それに「いいね」をしたり、シェアされて拡散されていく。

地元のローカルニュースが上位に表示

 特に2018年1月からFacebookでは、地元のローカルニュースをフィードでも上位に表示するようにアルゴリズムを変更したと同社のマーク・ザッカーバーグCEOが明らかにした。そのため、フランス各地でのローカルの「黄色いベスト」運動・デモの様子がフランス人が見ているFacebookの上位に表示されている。また友人や知人が参加してデモの様子や写真を投稿すると、それらも上位に表示される。さらに友人や知人が「いいね」を押下したニュースや情報も上位に表示される。そのようにFacebookで上位に表示された地元のデモに関する情報やニュースがさらに拡散、シェアされていき、多くの人が自分もデモに参加しようという思いを抱くようになっているようだ。

「Faccebookは年配の人にも情報が拡散できる」

 デモ参加者のChloe Tissier氏は「我々はFacebookを利用して情報発信や、仲間への呼びかけを行っている。5万人以上のメンバーがいる。若い人だけでなくFacebookは年配の人でも利用しているので、情報の拡散には適している」と語っている。

 またパリ第7大学でデジタルカルチャーを教えているTristan Mendes氏は「今回のデモ『黄色いベスト』運動は、組織化されていないし、スポークスマンや代表者もいない。このようなデモにとってFacebookのようなソーシャルメディアは誰でもが自由に情報発信をして、拡散できる手段として非常に適している」とコメント。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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