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Facebook、増収増益ながらも欧州では利用者減少傾向:GDPR、CAスキャンダルなどが影響か

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 Facebookは2018年10月30日、2018年第3四半期(7~9月期)の業績を発表した。第3四半期の売上高は前年同期比33%増の137億2700万ドル(約1兆5000億円)で、純利益は前年同期比9%増の51億3700万ドル(約5500億円)だった。モバイルでの広告売上高は広告売上高全体の約92%(前年同期が88%)を占めており、モバイルと広告収入に依存の収益構造は以前と変わらず、モバイルへの依存がますます強くなってきている。

 Facebookを毎月利用するマンスリーアクティブ利用者(MAUs)は、2018年9月時点、全世界で22億7100万人。デイリーアクティブ利用者数(DAUs)は、全世界で14億9500万人だった。

 ザッカーバーグCEOは「Facebookでは1日に1000億通のメッセージが送られている。Storiesでは1日に10億以上のスライドショーが共有されている。プライベートなチャットに使われ方がシフトしている」とコメント。以前のように友人や知人、世界中の人に写真などを公開するといったオープンな使われ方ではなく、プライベートなメッセージのやり取りにFacebook、Messenger、インスタグラムが使われてきている。またザッカーバーグ氏はAppleのiMessageやYouTubeがライバルであることを明示した。

CAスキャンダルやトークン流出も利用者減少に影響か

 2018年5月から欧州で「一般データ保護規制(GDPR)」が施行されたことから、欧州での月間利用者が100万人減少し、3億7500万人になった。欧州の利用者は2018年第1四半期は3億7700万人、第2四半期が3億7600万人と、四半期ごとに減少している。なおFacebookでは2018年5月から欧州で「一般データ保護規制(GDPR)」が施行されることから、欧州での利用者数が減少するかもしれない見解を示していたので、想定内の減少であろう。また、2018年3月には収集した約8700万人分の個人情報を規約に違反してCAに売却した不正スキャンダル(CAスキャンダル)、9月には5000万アカウントのアクセストークン流出が起きたことも利用者減少に影響している可能性が高い。

 Facebook利用者の約70%の15億人以上がアジア太平洋地域やその他の新興国市場で、これらの市場が占めるシェアは毎期ごとに増加している。新興国でもスマホの普及によって、Facebook利用者数が大きく伸びている。だが、まだ売上のほとんどは北米(アメリカ)と欧州だ。アジアや新興国でのマネタイズにはまだ時間がかかりそうだ。

Facebookの四半期ごとの地域別MAUの推移と割合(公開情報より作成)
Facebookの四半期ごとの地域別MAUの推移と割合(公開情報より作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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