ユニセフ、学校における暴力やいじめ報告書発表:半数がいじめを経験、スマホ普及による新たないじめも
世界の13歳~15歳の半数がいじめを経験
ユニセフ(国連児童基金)が2018年9月に発表した報告書『毎日の試練:学校における暴力をなくす(原題:An Everyday Lesson: #ENDviolence in Schools)』によると、世界の13歳から15歳の生徒の半数にあたる約1億5000万人が、学校において子ども同士の暴力を経験している。ユニセフが報告書で定義している「子ども同士の暴力」とは、過去1カ月間にいじめられたことがある、あるいは過去1年間に腕力を伴うけんかをしたことがあると答えた子ども。子ども同士の暴力は豊かな国であっても貧しい国であっても同じように、子どもの学びと幸福度に影響を与える。
この報告書は、学校において子どもたちが様々な形で直面する暴力について示しています。最新のデータには以下が含まれいる。世界の13歳から15歳の生徒の3人に1人以上が、いじめられたことがあり、ほぼ同じ割合が腕力を伴うけんかをしたことがある(122カ国のデータで日本は含まれていない)
●先進国39カ国(日本は含まれていない)の11歳から15歳の10人に3人が、他の生徒をいじめたことを認めている
●2017年に国連によって確認された学校への攻撃は、コンゴ民主共和国で396件、南スーダンで26件、シリアで67件、およびイエメンで20件
●7億2000万人近くの学齢期の子どもが、学校での体罰が完全には禁止されていない国に暮らしている
●男子・女子ともにいじめに遭うリスクは同じだが、女子はより心理的ないじめに遭いやすく、男子はより身体的な暴力や脅威にさらされやすい
デジタル化が進む世界での暴力
報告書によると、学校におけるナイフや銃などの武器を用いた暴力が、子どもたちの命を奪い続けていると指摘している。また、誰もがスマホを持つようになり、子どもたちの生活の中にもスマホが入り込んでいる。スマホがないと生活ができないし、友人たちとコミュニケーションもできない。SNSの利用も拡大している。デジタル化が進み、生活の利便性は向上したが、一方で、スマホが普及し、デジタル化が進んだことによって「スマホやキーボードをさわるだけで、暴力的な、人を傷つけ、また恥ずかしめるような内容を拡散する形のいじめも行われている」ともユニセフは報告書の中で指摘している。
報告書『毎日の試練:学校における暴力をなくす』は、ユニセフの子どもに対する暴力撲滅のためのグローバル・キャンペーン#ENDviolenceの一環として発表された。ユニセフは、キャンペーンの一環として、若者との対話(Youth Talk) を今後数カ月かけて、世界各地で実施していく。また若者たちが主体的に関わり、自らの暴力の経験を共有したり、学校を安全な場所と感じるために何が必要かについて声をあげたり、世界の指導者たちに提案するためのプラットフォームを提供していく。
学校での暴力をなくすために、ユニセフは、以下の分野における迅速な行動を求めている。
●子どもたちを学校における暴力から保護するための政策・法律を実施する
●学校における予防・対応策を強化する
●コミュニティや人びとに対して、暴力について声をあげる生徒たちと協力して、教室やコミュニティにおける文化を変えるために活動するよう求める
●生徒や学校の安全の手助けとなることが証明された解決方法に対して、より効果的かつ重点的に投資する
●学校における子どもに対する暴力に関するより良い細分化されたデータを収集し、成功例を共有する
「暴力を学ぶ必要のある子どもなどいない」
ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォア氏は「教育は平和な社会を築くための鍵です。しかし、世界の何百万人もの子どもたちにとって、学校そのものが安全な場所ではありません。子どもたちは毎日、けんか、ギャングの仲間になることの強要、直接あるいはインターネット上のいじめ、暴力的な指導、セクシュアル・ハラスメント、および武器を用いた暴力を含むいくつもの危険に直面しています。これらは短期的には彼らの学習に影響し、長期的には、うつ状態、不安、および自殺にさえ繋がることもあります。暴力は忘れることのできない試練となりますが、これを学ぶ必要のある子どもなどいないのです」とコメント。