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インド、2017年に1億2400万台のスマホ出荷:根強い人気のフィーチャーフォンは1億6400万台

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 インドがスマホ部品への輸入関税を検討しているという報道があった。インド国内でのスマホ製造を強化することが狙いとのことだ。以下に引用しておく。

インドがスマホ部品への輸入関税検討、国内製造業強化で-ロイター

インドがスマートフォンに欠かせない部品への輸入関税を検討していると、ロイター通信が報じた。同国のスマホ市場は世界で最も急成長を遂げており、国内製造業の振興が目的という。

匿名の政府当局者2人を引用したロイターによると、インド電子・情報技術省は輸入するプリント基板に10%の関税を賦課する案を討議した。スマホの構成部品であるプロセッサーやメモリー、無線チップセットなどはプリント基板上に実装される。関税は財務省が承認すれば数日内に実施される可能性があり、そうなればプリント基板の輸入コストは高くなるため、企業に国内調達・組み立てを迫るという。

出典:ブルームバーグ(2018年4月2日)

サムスンと中国メーカーが圧倒的に強いインドのスマホ市場

 上記のニュースは現時点では報道ベースで、当局からの正式な発表はない。だが、確かに実際に検討しているだろうことは推測できる。現在のインドのスマホ市場はサムスン(韓国)と中国メーカーが圧倒的にシェアが大きい。

 IDCインドによると、2017年の1年間にインドで出荷されたスマホは昨年よりも14%増の1億2400万台。約4台に1台がサムスン製で圧倒的なシェアを誇っている。サムスンはインドでは低価格の端末から高価なハイエンド端末まで幅広く販売しており、シェア1位だ。2位は中国のXiaomiだ。以前は中国市場でも人気があった同社だが、現在中国市場ではvivoやOPPOの台頭により影が薄くなってきたが、インドでは出荷シェアの20%を占めている。そのあともvivo、Lenovo、OPPOと中国メーカーが続いている。

 だが、今から数年前まではインドの地場メーカーのMicromaxやLavaなどもインドのスマホ市場での存在感はあり、シェア順位では2位や3位、時にはサムスンを抜くときもあった。だが、現在では圧倒的に中国メーカーが強い。低価格ながら品質も良く、プロモーション戦略も上手で、ブランドイメージも良いことから、インドでの中国メーカーのスマホの存在感は大きい。そしてほぼ中国製で中国の工場で組み立てた端末を輸入している。

スマホよりも売れているフィーチャーフォンはインドメーカーが強い

 日本や欧米などでは、出荷される携帯電話のほとんどがスマホだ。フィーチャーフォンはほとんど見なくなった。だがインドでは現在でもフィーチャーフォンがよく売れている。実際に2017年にインドで出荷されたフィーチャーフォンは1億6400万台と、スマホよりも4000万台多い。2016年のインドでのフィーチャーフォン出荷台数は1億4000万台だったので、現在でもフィーチャーフォン出荷台数は年々増加している。

 その理由はフィーチャーフォンの方が安いからだ。30ドル(約3000円)程度で新品のフィーチャーフォンを購入できる。インドでも都市部ではスマホが圧倒的に多いが、今でも電話とショートメッセージ(SMS)だけあればよいというインド人も多い。インドではGoogleなども積極的に無料Wi-Fiを敷設しているが、それでもスマホの通信費用はまだ高い。

 そして、そのフィーチャーフォンでも圧倒的にサムスンが強く、2位も中国メーカーだが、スマホよりはインドメーカーの健闘も目立っている。だが、フィーチャーフォンは1台の販売価格が安いので、利益率も低い。インド市場では、現在でもフィーチャーフォンの需要は高いが、メーカーとしては高価なスマホにシフトしていきたいところだ。

 これから部品のコストも低価格化が進み、高機能なスマホも低価格化していくことが想定される。インドでもフィーチャーフォンよりスマホの方が売れるようになり、出荷台数が逆転する日がすぐに来るだろう。インド政府としては、地場メーカーによる国内での製造を強化しておきたいところだ。中国メーカーのスマホがインドで市場競争力が強い現在、政府としては規制や輸入関税をかけることで、インド国内の製造業を活性化させていくしかない。

2017年のインドでのスマホとフィーチャーフォンのメーカー別シェア(IDCインド資料を基に作成)
2017年のインドでのスマホとフィーチャーフォンのメーカー別シェア(IDCインド資料を基に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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