フランス、AIの軍事活用の研究機関「国防イノベーション庁」設立へ
フランスのパルリ軍事大臣は2018年3月、人工知能(AI)を活用した次世代コックピット開発プロジェクトを明らかにした。「Man-Machine-Teaming(MMT)」と呼ばれるプログラムでは、ドローンや航空機の自動運転技術やセンサー、認識技術の研究を実施していく。フランスのAIやロボット関連のスタートアップ企業なども参加する。
諜報活動とセンサー認識、自律走行、飛行機の自動運転、コックピットのインターフェースの4領域でのAI活用を検討しており、2025年を目途に研究成果を実戦で使える技術としていき、2030年までに普及することを目指している。既にミサイル飛行の計算にはAIは活用されている。
軍事分野におけるAIとロボットの積極的な活用が進められている。特に、今までは戦場で人間(軍人)が行っていた「3D業務」(単調:dull、汚い:dirty、危険:dangerous)の任務の多くは既にロボットが行っている。ロボットは人間のように疲れないし、偵察や監視のような単調な業務にも退屈にならないので、戦場での「3D業務」には適している。また近い将来、戦場に軍人が送られるのではなく、AIを搭載したロボット同士での戦いになっていくのだろう。ロシアのプーチン大統領は2017年9月に「AIを制するものは世界を制する」と発言していた。民間でのAI活用もあるが、明らかに軍事分野でのAI活用も視野に入っているだろう。
「必ず人間が介在する仕組みを確保する」
またパルリ軍事大臣は「国防イノベーション庁(Defence Innovation Agency)」を2018年中に設立することを検討していることを明らかにした。ここでは人工知能(AI)の軍事利用を目的とした研究開発を推進していく。画像自動認識、電子戦、軍事ロボットの自動運転、サイバーセキュリティ、予測メンテナンスなどを研究していく。将来的には年間1億ユーロ(約130億円)の予算を投資していく。また2022年までに50人の専門家を採用する予定。
国防イノベーション庁は、既存の装備総局(DGA)とは別組織として設置される。失敗とリスクを恐れずに先進的な研究をフレキシブルに進めていく必要があることから別組織にしたとパルリ軍事大臣は説明。
現在、国際社会ではAIが発展しロボット兵器が自らの意思を持って判断して人間を攻撃してくるキラーロボットと呼ばれる、いわゆる「自律型致死兵器システム(LAWS)」の脅威が懸念されている。パルリ軍事大臣は「キラーロボットに発展しないようにする。攻撃の決定プロセスには、必ず人間が介在する仕組みを確保する」と強調した。