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ユニセフ・イノベーション基金、子どもの生活改善に最先端技術を活用

佐藤仁学術研究員・著述家
ドローンを持つ女性 (マラウイ) (C) UNICEF

 ユニセフ(国連児童基金)は2017年12月、イノベーション基金を通して、データサイエンス、仮想現実(VR)および人工知能(AI)などの最先端技術を駆使し、子どもたちの生活を改善するための解決策を提供するスタートアップ企業6社に資金提供することを発表した。

 新しい技術開発、サービス化に向けては人件費や設備費など多大な資金が必要だ。ユニセフ・イノベーション基金は、昨年から資金提供を開始し、技術系スタートアップ企業に投資申請し、拡大を続けるオープンソース・ソリューションのポートフォリオに参画することを呼びかけている。基金が初年度に投資したスタートアップ企業8社は、リアルタイムデータ収集、識別認証技術および学習を改善する技術ソリューションを提供するオープンソース・プラットフォームを使った問題解決技術の導入に成功している。

 最も恩恵を受けられない子どもたちの生活を改善する可能性を有する最先端技術分野の新しいテクノロジー企業に、技術ソリューションを開発するための資金として1260万米ドル(約14億円)が活用される。

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障がいを持つ子への支援からドローン開発など6社へ出資

 そして今回、資金提供を受けた6社は主に以下の分野である。

障がいを持つ子の支援

 ユニセフ・イノベーション基金では、特に障がいを持つ子どもたちが抱える問題に革新的な解決策を提供できる最先端技術への投資を戦略として位置づけている。例えば、口頭でのコミュニケーションに問題を抱える子どもたちを支援するための技術開発のために、CIREHANinaad Digital TechnologyBeijing Daokoudaiの3社に資金提供を行う。

VRで子供たちの心理支援

 また、若者や子どもが抱える恐怖症や社会適応の問題の解決を目標としているトルコのVRテクノロジー企業のIdeasisは、自社のプラットフォームが、難民キャンプにおいて紛争や危機的状況にある地域の子どもたちの心理社会的支援に役立てられることに期待されている。

遠隔地にもドローンで支援

 さらに遠隔地における緊急支援や人道支援に利用できる情報や画像を収集するために、ドローンを使用した飛行活動のためのソフトウェアとハードウェアを開発しているAutonomous Systems Researchにも資金を提供。

危険情報をモバイルアプリで

 他にもパレスチナで、モバイルアプリを活用して危険な事件や場所を地図上で可視化し、人々に知らせるためのプラットフォームを提供するRedCrowにも資金を提供している。

 ユニセフ本部イノベーション基金マネージャーのSunita Grote氏は 「ユニセフは基金を通して、最先端技術市場を世界の最も弱い立場にある子どもたちが恩恵を受けられる方向に形づくる機会を得ました。申請手続きを通じて、私たちは最先端技術が子どもたちの間の不平等を変え、人生を変える解決策を提供する可能性があることを発見しました。私たちの目的は、そのような解決策を見出し、投資することです。私たちの基金の3回目となる今回の投資の対象として選んだ企業は野心的な仲間で、彼らと協力していくことを楽しみにしています」とコメントしている。

 例えばアフリカでは遠隔地での人道支援にドローンが活用されようとしている。

ユニセフ・イノベーション基金

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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