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オランダ警察、違法ドローン捕獲の「鷲の警官」を断念:コスト高、出動機会少ないため

佐藤仁学術研究員・著述家

 オランダ警察は2016年から、鷲(わし)を活用して違法ドローンの取り締まりを行うために、鷲の訓練を行っていた。ドローン禁止区域や禁止時間帯での飛行や盗撮、スパイ目的や犯罪にドローンが上空を飛行したら、「鳥の王者」の異名を持つ鷲が違法ドローンを捕らえる予定だった。そして2017年の夏には、NATO首脳会談での警備も担当していた。実際に違法ドローンは現れなかったようだ。

 「ドローンのようなハイテクソリューションに、鷲というローテクなソリューションで対抗する」と警察広報官のDennis Janus氏は2016年10月に語っていた。

鷲の育成コストが高く、出動機会も少ないから断念へ

 だがオランダ警察は、違法ドローン捕獲のために鷲を活用することを断念した。4羽の鷲の警官がいる。理由は鷲を育成訓練するためのコスト、エサ代、ゲージ代が高いことから維持費にコストがかかり過ぎる。約100人の警察官が鷲を使った違法ドローン捕獲のためのトレーニングを実施していた。

 また、高コストに対して、出動機会が少ないことも断念の理由の1つだ。たしかに、鷲は常時、空を飛んでいて不審ドローンや違法ドローンを発見して捕えるわけではない。NATO首脳会談のイベントのように、人間の警官が同行して指示を出すような大型イベントの時に出動するようだ。

 鷲の警官が違法ドローンを捕獲したこともなかった。そのため、実際に違法ドローンを目の前にした鷲が訓練通りに違法ドローンを捕獲するかどうかは、わからないままとなった。だが鷲が不審なドローン捕獲による大きな事故の犠牲にならなくて済んだのは良かったのかもしれない。

以下のような動画での訓練を行っており、違法ドローンを捕獲する予定だった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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