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Facebook、インドで輸血ドナー登録サービス開始:慢性的な血液不足は解決できるのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 Facebookは2017年10月1日からインドで献血者情報の登録と提供を開始した。輸血ドナーの情報をFacebookに登録できる。提供者の同意があるまで個人情報は開示されない。患者や病院が輸血を必要としている時にはFacebookで必要としている血液、場所などの情報を要求する。その後、必要とされる血液の情報がドナー登録している人にFacebookやメッセンジャーで通知が届く。

 FacebookのHema Budaraju氏は「インドで輸血に対する認識が向上し、多くの人が簡単に輸血情報を登録し、必要としている人に血液が届くことを期待している」とコメントしている。

慢性的な血液不足の背景としてのカースト

 インドでは慢性的に血液が不足している。その背景として輸血によるHIV感染が多いこと、社会的な背景から同性愛者や異なるカーストからの輸血を受け付けない習慣が根強いことがあげられる。特に農村地域にはその伝統が残っており、国土が広く血液センターや医療機関の整備がまだ遅れているためにドナーの大部分は近親者、もしくは同じカーストの知人だ。

 

 インドではスマホが広く普及し、Facebookの利用者も2億人を超えており、世界一利用者が多い。だが、異なるカーストからの輸血拒否は、インドの長い歴史と社会的な風習に依拠する部分が多い。一朝一夕で解決できるような問題ではないだろう。

血液提供者のページ(Facebook)
血液提供者のページ(Facebook)
献血を必要とする患者のページ(Facebook)
献血を必要とする患者のページ(Facebook)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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