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広島県坂町、自治体PR動画初:町民が体を張って「歩きスマホ」の危険性を訴え

佐藤仁学術研究員・著述家
(広島県坂町・制作『ATTACK of smartphone』より)

 広島県安芸郡坂町は「ウオーキングのまち」。平成22年の町制60周年を記念して「悠々健康ウオーキングのまち」を宣言。町内全域の公園や遊歩道コースをネットワーク化。「健康の維持促進」を図るとともに「自然を大切にする心」「ふるさとを想う場」の創造を目的としてウオーキングを通じたまちづくりを推進している。坂町の人口は約13,000人。面積15.69平方キロメートルの小さな町。

 このまちづくりの一環として「ウオーキングのまち坂町」では、2017年7月1日、内閣府「国民安全の日」に合わせて「歩きスマホの危険性」を訴える動画『ATTACK of smartphone』(スマートフォンの攻撃)を公開した。

▼広島県坂町PR動画「ATTACK of smartphone」

町民170人が体を張って「歩きスマホ」シーン

 「ウオーキングのまち」を宣言する坂町は、「歩きスマホ」の課題を真摯に受け止め、町民一丸となり、まさに「体を張って」歩きスマホの危険性を訴える動画を制作。タイトルの『ATTACK of smartphone』(スマートフォンの攻撃)は「歩きスマホ」がユーザー自身への攻撃になることをアイロニカルに表現。動画中の様々な「歩きスマホ」シーンでは実際に坂町民170人以上が出演することで、このメッセージ発信への“本気度”を感じてもらい、視聴者一人ひとりの心に訴えることを目的としているとのことだ。

 自治体PR動画といえば、地域の風土や見どころをメッセージするコンテンツが主流だ。本動画は町の自己アピールありきではなく「社会をよくしたい」という使命感からプロジェクトがスタートしたそうだ。自治体PR動画としては異色の「公共メッセージ動画」となっている。

危険がいっぱい「歩きスマホ」

 坂町が制作した動画シーンを見ても、「歩きスマホ」で同じような経験をしたと思いあたる人も多いのではないだろうか。大都市ではもっと人が多いから「歩きスマホ」はさらに危険だ。駅などで注意喚起をしていても一向に減少しない。

 「歩きスマホ」をしている人は、視野が凄く狭くなっている。特にLINEやメールなどの返信をしている時(スマホに打ち込んでいる時)は、ネットのニュースや天気をチェックしている時よりも、スマホに神経が集中しているので、更に視野は狭くなっている。それにも関わらず『自分だけは大丈夫』『絶対に事故に遭うことはない』と思いこんでいる。そして障害物や他人にぶつかりそうになっても『自分はスマホのチェックで忙しいのに、どうしてどいてくれないの?』『今、LINEの返事をしているんだから』などと、公共の場にいながらも自己中心的な思考に陥っていることが多い。他人にぶつかって加害者になりうることも多い。

 更に最近ではスマホで動画を視聴する人が多く、イヤホンをしながら「歩きスマホ」している人も多い。特に電車の中でドラマやYouTubeなど動画を視聴しており、そのまま動画の続きが気になって、駅で降りてもイヤホンをつけたまま「歩きスマホ」で動画視聴をしていることが多い。人間は目だけでなく、音でも周囲の状況を判断している。「歩きスマホ+イヤホン」は視界だけでなく聴覚による周辺環境の察知を遮断しているので、物凄く危険だ。

 東京消防庁の発表によると、平成24年から平成28年の過去5年間で「歩きながら/自転車に乗りながら」などの歩きスマホ等に係る事故により少なくとも193人が、平成28年には50人が救急搬送されており過去5年間で最多。全国に範囲を広げると事故件数は更に拡大している。

(参考)広島県坂町の紹介動画

広島県坂町

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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