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アウシュビッツをドローンで空撮:米国映像会社が制作「巨大さに言葉も出ない」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 ナチスがポーランドに設置し、ユダヤ人やロマら110万人が殺害されたアウシュビッツ絶滅収容所。アウシュビッツのドローン空撮は2015年1月に解放70年を記念してBBCが制作した動画が有名だ。

「巨大さに言葉も出ない」

 今回、米国の映像会社BiG Productionsがドローンでアウシュビッツを空撮した。これから放送で使用する映像の一部として公開している。同社のディレクターGi Orman氏によると、ドローンでの空撮はアウシュビッツの開館2時間前の早朝に実施。そのため、誰も訪問者がいないアウシュビッツを空撮できた。「アウシュビッツについては多くの本も出ているし、当時の写真もある。だが空撮でアウシュビッツの全体像をとらえることによって、アウシュビッツという殺人工場を知ってもらいたい。その巨大さに言葉も出ない」とGi Orman氏は語っている。

 2017年6月にはアウシュビッツの生存者で元欧州議会で女性初の議長だったシモーヌ・ベイユ氏が逝去された。また2017年8月にはアウシュビッツ生存者で世界最高齢の男性としてギネス認定されていたイスラエル・クリスタル氏も113歳で逝去された。当時のことを経験している人も記憶している人も年々減少している。

 アウシュビッツでは狂気の大量虐殺計画に沿って、最後の一人まで寸分の狂いもなく機械的に殺害された。まさに人間処理工場と呼ばれる殺戮施設だった。ドローンによる空撮では、その無機質な跡地からは当時の地獄の様子は伝わらないかもしれないが、それでも映像としてアウシュビッツという近代の地獄の巨大さ、不気味さを確認することができる。

(参考)

▼BBC制作「Auschwitz 70: Drone shows Nazi concentration camp」(2015年)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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