ドイツ「ヘイトスピーチを削除しないTwitterに抗議」オフィス前にヘイト投稿をペイント
ドイツのハンブルグにTwitterのオフィスがある。その前の通りに、ドイツ系イスラエル人の芸術家Shahak Shapira氏が2017年8月4日にスプレーでヘイトスピーチに対する抗議のペイントを行った。実際にTwitterに投稿された約30個のヘイトスピーチの内容をスプレーでペイント。
Shapira氏は6カ月にわたって、Twitterに投稿されている約300件のヘイトスピーチに対して削除を申し出たが、9件しか削除されなかったようだ。そのためスプレーで抗議。現在では一部のヘイトスピーチが削除されているので、スプレーでのペイント講義も効果があったようだ。それでもまだ反ユダヤ、反ムスリム、反黒人の投稿は残っているそうだ。
Shapira氏は動画も公開しており、既に21万回以上再生されている。
「ヘイトスピーチを24時間以内に削除しないSNSには最大60億円の罰金」
ドイツでは2015年あたりからシリア、アフガニスタンからの難民が急増したことに伴い、SNSへのヘイトスピーチの投稿も増加。Shapira氏によると、Facebookでは150件くらいの同じようなヘイト投稿があったが、3日以内に80%が削除されているとのこと。
ドイツで2017年6月30日に、ソーシャルメディア(SNS)がヘイトスピーチの投稿を削除しない場合には、最大5,000万ユーロ(約60億円)の罰金を科す法案が可決された。2015年12月にはFacebook、TwitterなどのSNSはヘイトスピーチの投稿があった場合は24時間以内に削除することに合意。10月から施行される予定。ドイツでは「Facebook法」とも言われている。
日常生活の不安・不満のはけ口としてのSNS
第二次大戦中にナチスによるユダヤ人やロマの差別迫害で600万人以上のユダヤ人が殺害された。ナチスの反省からドイツでは難民・移民に対して寛大であり、受け入れる経済的余力も他のヨーロッパ諸国よりはある。2015年だけでシリアやアフガニスタンを中心に110万人以上の難民・移民がドイツに流入。このような難民・移民の存在に不安や不満を感じるドイツ人も多い。またドイツ人だけでなく、以前にドイツにやってきた中東やアフリカからの移民らは、自分たちの仕事を新たに来た移民や難民に奪われるのではないかという不安を持っている人も多い。新たに来た移民や難民は生活基盤の安定のために仕事が欲しいから、安い賃金でもいいから働きたいと思っているので、以前からドイツにいた移民らにとっても脅威である。
例えば「ユダヤ人はガス室へ送ろう」といった明らかにヘイトスピーチとわかる投稿はすぐに削除できる。だが、本人はヘイトスピーチと意識していない「日常生活の不満」の投稿も多く、線引きが難しくなってきている。
また、ケルンで2015年12月31日に若い男性集団が女性たちを取り囲んで金品強奪や性的暴行事件が650件以上も発生した。これはドイツ史上に名を残すような大事件となった。被害に遭ったと警察に届け出た女性は600人以上に達し、加害者には難民申請者が多かった。この事件以降、ドイツ人の移民に対する怒りや不満は減少していない。彼らの怒りや不平不満の捌け口としてソーシャルメディアが活用されており、ドイツでのヘイトスピーチ関連の投稿は1年で112%増加した。