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ユニセフ、「AIパートナーシップ」に参画:社会的課題の解決に向けたAIの活用を目指す

佐藤仁学術研究員・著述家
(C) UNICEF

ユニセフ(国連児童基金)は2017年5月、Amazon、Apple、Google/DeepMind、Facebook、IBM、Microsoftによって創設された「AIパートナーシップ」(Partnership on Artificial Intelligence (AI))に参画することを発表した。

「AIパートナーシップ」は2016年にアメリカのIT起業らが集結してAI(人工知能)技術の開発、試験、現場利用を研究しベストプラクティスを形成し、社会でのAI技術の理解を促進し、AIとその社会への影響に関する議論や基準の策定などを行うための開かれたプラットフォーム。

ユニセフ・イノベーション部門は、今回の「AIパートナーシップ」参画によって、人道的課題に対する革新的な解決方法によって子どもたちを守ることで、AI技術の社会的利益のための使用の拡大に向けて協力関係を築いていくことを目指している。

マジックボックスで収集したデータを元にAI強化

「AIパートナーシップ」に加盟しているIT企業との協力関係を通じて、ユニセフのデータサイエンティストらが社会的な課題解決のためにAIを使用できるようになる。ユニセフでは2017年3月に欧州の大手通信事業者テレフォニカと提携して、緊急時の情報提供と人道支援計画策定にビッグデータを活用するユニセフ「マジックボックス」イニシアティブを発表した。マジックボックスでは、人間の行動をより良く理解していくことを目的に携帯電話などの利用状況などリアルタイムかつ個人が特定できない形に加工されたデータを収集。

これら大量のデータを分析することで、地震、地滑りや洪水などの自然災害発生の際に、警報の発信や緊急対応、復旧状況のモニタリングなど、人道危機管理の改善に役立てていく。これらの膨大なデータはAI(人工知能)の強化にもつなげていき、リアルタイムでかつ命を守るための人道支援に関するデータ分析手法の開発を推進していく。将来的には地震や洪水などの緊急事態において瞬時に決断を下すのに必要かつ適切な情報をAIが提供してくれるようになる。

ユニセフ・イノベーション部門プリンシパル・アドバイザー兼ユニセフ・ベンチャー代表のクリストファー・ファビアンは 「ユニセフは常にデータを駆使してきた組織。これからも周辺の大量のデータを処理しそこから学ぶ能力を備えているおかげで全ての子どもたちの生活を改善できるようになる。ユニセフは世界の最も弱い立場にある子どもたちのニーズと最先端のAI技術がもつ可能性とを繋ぐことができる立場にある。未来のAIは、病気の流行、気候変動や災害への対応、雇用不安などのグローバルな問題について取り組むことに役立てられる」と述べた。

「AIパートナーシップ」自身も以前から、AI技術によって人々の生活の質を向上し、食物・幸福の追求・健康・教育など世界規模での社会的課題を解決するために活用できることを信じていると宣言していた。最近ではAI活用の話題はビジネスでの収益拡大、もしくはAIによって仕事が奪われる、AIが人類を崩壊させるといったネガティブな話題ばかりが目立っていたが、社会の課題解決にもAIを活用できそうな分野はまだ多くありそうだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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