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Apple「iPhone 7 Plus」が好調で増収増益:ただし旧正月なのに中華圏の売上は大幅減

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Appleは2017年5月2日に2017年Q2(2017年1~3月期)の業績発表を行った。

売上高は前年同期比5%増の528億9,600万ドル(約6兆円)、純利益は5%増の110億2,000万ドル(約1.6兆円)だった。3半期連続の減収減益が続いていたが、久しぶりの増収増益となった。

iPhone 7 Plusが大人気

Appleの今期の売上高528億9,600万ドルのうち、iPhoneは332億4,900万ドルと約63%。前期はクリスマスシーズンでiPhone7、iPhone7 Plusの売上が大きく貢献しており、それらが継続。売上の伸びでは2016年に入ってからサービス分野(AppleCare、Apple Pay、ライセンス事業など)の成長が著しく、売上の増加は大きい。ティム・クックCEOは「特にiPhone 7 Plusの人気が絶好調で、勢いはクリスマスからずっと続いている。またiPhone 7 (PRODUCT)REDも好感触。さらにサービス分野も好調」とコメント。

▼製品別での出荷台数、売上高および売上高に占めるシェア

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)

旧正月なのに、中華圏での売上が減少

地域別でみると、中華圏での市場が前年比よりも売上が減少したが、それ以外の地域では売上増だった。中国市場は10~12月のクリスマスシーズンなので、それほど端末が売れない。むしろ1月末~2月にかけての旧正月でのセールが例年一番端末が売れる時期で、まさに今期は中国市場で一番売れるはずの時期だった。にも関わらず、中国市場での売上はクリスマスシーズンの前期よりも、昨年の同時期よりも減少している。たしかに周辺の中国人も以前のように最新機種が登場したからといって、すぐに購入する人も減少した印象がある。古いiPhoneを利用している中国人もたくさんいる。

▼地域別での売上高とシェアの推移

(Apple決算資料を元に作成)
(Apple決算資料を元に作成)

中国では韓国との政治的な理由からサムスンの端末が現在は全く売れない。中国市場でサムスンが占めていたハイエンド端末のシェアをAppleは奪うことが出来ていない。一方で地場の中国メーカーの台頭が著しい。2015年には1年間で中国でAppleは5,840万台を出荷しておりシェアも13.6%あったが、2016年には4,490万台と、年間で1,350万台も中国での出荷台数が減少。

Appleは2017年3月17日、中国の上海と蘇州に研究開発センターを開設することを明らかにした。35億元(約560億円)を投資し、2017年のうちにオープンする予定だ。北京、深センにある研究センターと合わせて、中国本土で4つの開発拠点が設置されることになる。北京大学、清華大学などの卒業生を技術者として雇用していく予定。Appleは中国に22のオフィスがあり、46の店舗があり12,000人以上が働いている。さらに、中国全土で480万人の雇用創出に貢献している。

トランプが大統領に就任し「アメリカファースト」を唱えて、多くの製造業にアメリカでの工場建設や雇用創出を要求している最中にも関わらず、Appleは積極的に中国市場へ投資している。中国はAppleの売上規模でも約20%を占めており、国としてはアメリカに次ぐ重要な市場。売上減退を食い止めて、なんとしてでも中国市場で盛り返したいところだ。

中国におけるメーカー別スマホ出荷とシェア(IDC発表資料を元に作成)
中国におけるメーカー別スマホ出荷とシェア(IDC発表資料を元に作成)

クックCEOも自身のTwitterで旧正月を祝ったメッセージを中国語で寄せていたが、中国市場での売り上げ増には結びつかなかった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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