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アマゾン、北米とAWSは好調:赤字続きの海外市場、ベゾスCEOはインドでの成長に期待

佐藤仁学術研究員・著述家
(Amazon India)

アマゾンは2017年4月27日、2017年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。売上高は前年同期から23%増の357億1,400万ドル(約4兆円)、純利益は41%増の7億2,400万ドル(約850億円)。クラウド事業AWSが絶好調で、8四半期連続の黒字を達成。かつてのような赤字決算を脱し、アマゾンの経営が安定してきた。

売上はアメリカ、利益はAWS

アマゾンの売上高構成比は、北米市場(特にアメリカ)での売上が約60%である。この構成比はここ何年間も大きな変更はない。海外市場はイギリス、ドイツ、日本、フランス、中国、イタリア、スペイン、インド、メキシコ、ブラジル、オーストラリアの11か国を合わせても売上高構成比は30%程度だ。また海外市場は売上高としては前年同期比16%増の110億6,100万ドルと売上は伸びているものの、営業損失は4億8,100万ドルの赤字だ。

アマゾンの黒字転換にも大きく寄与し、成長が著しいのは、クラウド事業のAmazon Web Services(AWS)だ。売上高は前年同期比43%増の36億6,100万ドル、営業利益は同47%増の8億9,000万ドル。アマゾン全体の売上構成もついに10%を突破。営業利益は北米市場よりも大きく、アマゾンの重要な収益の柱に成長した。

2017年第1四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)
2017年第1四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)

ベゾスCEOはインド市場での成長に言及

北米市場での安定的な売上高とAWSの売上、利益は絶好調だが、海外市場はいつも赤字だ。投資が常に必要なようだが、そのような中でアマゾンのCEOのJeff Bezos氏は今回の決算でのコメントではインド市場での成長について言及。

「アマゾンのインドチームは顧客にも出店している店舗にとっても急速に成長している。9か月前にインドでAmazon Primeサービスが開始されてから、商品も75%増加した。さらに今年に入ってからはフルフィルメント機能は26%向上している。また18本のインドでのオリジナル動画も公開。インド市場に特化した英語とヒンドゥー語の音声検索に対応した Fire TV Stickもリリースした」とベゾスCEOはコメント。さらに「インドでアマゾンは最も多くの人がアクセスし、最も成長しているマーケットプレイス。顧客からの反応も非常に嬉しい。インドではまだネット通販は始まったばかりだが、これからも顧客や中小企業の店がアマゾンを利用しやすい環境を作っていくためにも、インド市場で技術や配送インフラなどに投資を続けていく」とこれからも積極的にインド市場に投資をしていくことを明らかにしている。

アメリカやイギリス、ドイツなどでは「ネット通販といえばアマゾン」だが、インド市場はまだこれから。ベゾスCEOはインドのネット通販について「まだ始まったばかりの市場(It’s still Day 1 for e-commerce in India)」と示唆するように、これからの成長が期待される市場だ。だが人口12億人を超え、スマホも急速に普及しているインド市場を狙っているのはアマゾンだけではない。インドのネット通販Flipkartはアマゾンのライバルだが、eBayやテンセント、マイクロソフトが同社に14億を投資するなど競争は厳しい。アマゾンも当面は、北米市場とAWSで稼いだ資金をインドをはじめとする海外市場に投資を続けるという構図は変わらないだろう。

インドでアマゾンでのネット販売への参加を呼び掛ける動画「Amazon India Seller University」では中小企業や女性でも積極的にネットでの通販に参加することによって顧客や市場を拡大していることを強調している。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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