アマゾン、英国で「ホロコースト否定に関する本」撤去:イスラエルからの要請で

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

2017年2月にイスラエルの国立ホロコースト記念館ヤド・ヴァシェムの館長Robert Rozett氏がアマゾンのベゾスCEOに対して、アマゾンでホロコースト否定に関する本の販売停止を要請する書簡を送った。イタリア、フランス、ドイツなどホロコースト否定が違法となっている国のアマゾンでは既にホロコースト否定に関する本の販売は停止されているが、アメリカとイギリスのアマゾンでは現在でもまだ販売されている。

最初は反対していた英国アマゾン

ホロコーストとは第2次大戦時にナチスドイツによるユダヤ人迫害で、600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯などがアウシュビッツなどの絶滅収容所で殺害された。ホロコースト否定とは「そのようなホロコースト(大虐殺)はなかった」「600万人も殺害されていない」といった主張。現在でも反ユダヤ主義が蔓延している欧州やアメリカではホロコースト否定論者が現在でも多く存在し、ホロコースト否定に関する本も多く出版されている。Robert Rozett氏は、世界中で蔓延している反ユダヤ主義やヘイトスピーチ拡散に対する流れを止めることを目的としてアマゾンに本の販売中止を要請していた。またアマゾンでは一度、ホロコースト否定の本を検索やクリックした人には、お馴染みの「あなたにお勧めの本」ということで、似たようなホロコースト否定の本が紹介されてしまうことや、ホロコースト否定に関する読者の「書籍レビュー」もホロコースト否定の考えが拡散していくことになっているとRobert Rozett氏は懸念している。ヤド・ヴァシェムでは以前にもホロコースト否定に関する本の販売停止を要求していたが、アマゾンからは表現の自由を阻害するとのこと、イギリスではドイツやフランスと違ってホロコースト否定の本販売は法律で禁止されてないことから当初は拒否されていた。

今回、イスラエルからの要請に応じてイギリスのアマゾンではホロコースト否定に関する3冊の本の販売を中止することを明らかにした。Rozett氏は「前向きな第一歩だ」とコメント。イギリスのユダヤ人団体のMarie van der Zyl氏は「アマゾンからホロコースト否定や反ユダヤ主義に関する本が撤去されたのことを非常に嬉しく思う。これらの本は歴史的な検証がされておらず、ただ反ユダ主義を助長し、ヘイトスピーチや人種差別に繋がっていく」と述べた。

アマゾンでの販売が中止されたのは以下の3冊。

1. 「Holocaust: The Greatest Lie Ever Told」(Eleanor Wittakers著)

2.「The Hoax of the Twentieth Century: The Case Against the Presumed Extermination of European Jewry」(Arthur R Butz著)

3.「Did Six Million Really Die?」(Richard Harwood著)

たとえアマゾンで販売停止しても

現在のイスラエル、パレスチナをめぐる中東問題の根源はイギリスが生み出したと言っても過言ではない。ヒトラーは当初、イギリスを敵と見做していなかったと言われている。フランスと違ってイギリスはアングロサクソンであることや大英帝国、特にインドや南アフリカの支配地域を是認していた。むしろこれらの支配地域では「ナチスが目指していた人種に基づく人間の分類」、「現地人の奴隷化」が既に行われていたことからヒトラーは親近感を持っていたようだ。またイギリスのブルジョアジー指導者も欧州大陸におけるフランスのヘゲモニー(覇権)を弱め、ドイツの軍備の矛先を欧州の西側から東側に向け変え、ドイツの侵略をソ連に差し向けようとドイツの軍備化を支持していた。そして、戦後多くのユダヤ人難民が当時イギリス領だったパレスチナを目指してやってきた。親アラブに傾くイギリス政府に業を煮やしたユダヤ人シオニストらは、武力で対抗していった。1946年7月にはエルサレムのダビデ王ホテルに爆薬を仕掛けられ、イギリス政府職員ら91名が殺害された。またイギリス将校を殺害したことで、イギリスの各地で急激に反ユダヤ感情が燃え上がり、イギリス人による反ユダヤ暴動が発生した。そして1947年2月、イギリスはパレスチナの委任統治を国連に戻すことを表明し、現在まで続く血なまぐさい中東問題につながっている。そのような歴史的背景もありイギリスでは反ユダヤ主義やホロコースト否定の本や情報にはそれなりの需要があるようだ。

アマゾンは欧米で多くの人が書籍を購入するサイトだ。アマゾンでホロコースト否定の本を扱わないことはホロコースト否定思想の拡散防止の一助にはなるが、たとえアマゾンで購入できなくとも他の場所で購入できるのであれば、根本的な問題解決においてはどの程度の効果があるのかは不明だ。