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「LINEが無くても連絡とれますか?」LINE以外のコミュニケーション手段の確保も

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

東日本大震災後に登場したLINE

2011年3月11日の東日本大震災からもうすぐ6年。当時はまだスマホもほとんど普及しておらず、多くの人がガラケーを利用していた。LINEもなかった。連絡手段はほとんどが携帯電話のメールが主流だった。東日本大震災では電話が不通になってしまい、多くの人がメールやTwitter、FacebookなどのSNSは利用できたので、ネットが電話の代わりに利用されて、安否確認に大いに役立った。TwitterやFacebookで自分や周辺の情報を世界中に写真や動画で発信したり、メッセージ機能で個別に連絡を取り合っていた。SNSが震災時の安否確認に役立った世界初の事例として海外からも注目された。

今でこそ、スマホが普及してコミュニケーションの中心になっているLINEだが、東日本大震災時にはまだLINEがなかった。東日本大震災から3か月後の2011年6月からサービスを開始した。また震災直後ということもあり、相手がメッセージを読んだ、つまり相手の無事を確認できる「既読」機能も搭載した。「既読」機能は現在ではFacebookメッセンジャーなどでも活用されている。2016年4月に熊本地震が発生した際には、日本国内でのトーク送信数が通常の2倍になったそうだ。

「LINE以外の連絡手段ありますか?」

そして現在では日本では誰もがLINEを家族や友人、知人らとの連絡手段とするほど普及している。日本国内で6,600万人が利用しておりまさにコミュニケーション手段の中心になっており、LINEがなくなっては生活も仕事もできないという人も多いだろう。「LINEする」という言葉が日常生活、メディアの中でふつうに使われるようになった

だがLINEは民間企業が提供するスマホのアプリだ。携帯電話事業者のように国から電波免許を受けてサービスを提供しているわけではない。LINEが突然利用できなくなることも想定しておかないといけない。実際に、1年前の2016年3月11日17:45から19:58までの約2時間15分間に渡ってLINEで障害が発生して、メッセージの送受信や通話機能などが使えなくなった。当時LINEは全世界で2億人以上、日本で6,800万人以上が利用しており、サービスが利用できなかった。LINEがシステム障害で利用できなくなった3月11日は、東日本大震災からの5年目で14:46には日本中の多くの職場や学校で黙祷が行われていた。その3時間後にLINEが利用できなくなった。金曜の夕方から夜にかけてLINEが利用できなくて、連絡ができなくて、待ち合わせやコミュニケーションで困った人も多かった。

世界規模で見るとFacebookメッセンジャーの急速な普及によって、かつてLINEがよく利用されていた台湾、タイ、インドネシアでも多くの人がFacebookメッセンジャーを利用しており、LINEの利用者は世界規模で見ても減少している。利用者はずっと横ばいだったが2017年1月の決算発表時にLINEはサービス開始以来、初の利用者減少となった。日本でも多くの人がLINEだけでなくFacebookメッセンジャーも利用する人が増加してきた。それでも日本ではまだLINEが一番多く使われているコミュニケーションツールだ。

LINEだけに依拠しないでもいいように代替ツールの確保

2016年3月にそのLINEが突然利用できなくなって困った人も多かった。LINEの連絡先しか知らなく、電話番号やメールアドレス、SNSなど他の連絡手段を知らないので、LINEが利用できなくなってしまうと、どうやって連絡をしたらいいのかわからずに困った人も多かった。

家族や本当に親しい友人、限られた仕事の同僚とは電話番号を交換をしているが、それ以外の人は連絡先はLINEしか知らないという人も多い。LINEが利用できなくても、電話番号やメールアドレス、FacebookやTwitterなど他にコミュニケーションできる手段を確保しておいた方がよいと思った人も多かっただろう。

世界中で2億人以上が利用しているとはいえ、LINEは民間企業が提供する無料のサービスで、ほとんどの人が無料で利用している。障害による一時停止だけでなく、いつサービスそのものがなくなるかもわからない。LINEはメッセージアプリとして日本では最大級だが、世界規模で見たらWhatsAppやFacebookメッセンジャーは10億人以上の利用者がいる。メッセージアプリは競争が激しく新たに登場しては、すぐにサービスを停止してしまうメッセージアプリは日本や海外でも非常に多い。

震災時だけでなく、平時でもLINEだけに頼らないで、LIENが利用できなくなった時には、他にも連絡が取れる手段を日ごろから確保しておきたいものだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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