ホンダ、東南アジアのバイクタクシーGrabと協業:「バイクは持つより呼ぶ時代へ」

インドネシアでも大人気のGrabのバイクタクシー。スマホで呼ぶと来てくれる

ホンダは2016年12月12日、シンガポールに拠点を置いて東南アジアで車やバイクの「モビリティシェア」をしているGrabと、二輪車(バイク)シェアリングで協業することを発表した。Grabはソフトバンクも出資している会社で、東南アジアで急増している。バイクやタクシーをスマホで呼ぶUberの同業他社だ。

ホンダのリリースから、その背景や戦略を引用しておきたい。

Grab Inc.と東南アジアでの二輪車シェアリング領域における協業の検討を開始

(前略)

近年、「シェアリングエコノミー」と呼ばれるモノの共同利用活動がグローバルレベルで拡大していることに伴い、東南アジアの二輪車市場においても、「所有」から「共同利用」へと使用形態が広がる兆しが見えています。

 この環境下で、グラブ社がモビリティシェアリングビジネスで培ってきた知見と、Hondaが持つ二輪車のラインアップ、販売網やサービスなどのリソースを活用し、東南アジアでの試験的な取り組みを通して、シェアリング領域での新しい移動サービスの実現を目指します。

 Hondaは、二輪車市場が拡大する東南アジアにおいて、各国のニーズに根差し、環境・安全性能に優れた二輪車の普及を進めるとともに、環境問題への取り組みや安全運転普及活動なども積極的に展開しています。今後グラブ社との協業を通じて、Honda独自のテレマティクス技術などを活用し、都市部での渋滞緩和への取り組みを進めるほか、環境性能の高い二輪車を採用することにより、CO2排出量のさらなる低減に向けた活動を進めていきます。さらに、Hondaの交通教育のノウハウや施設を活用し、二輪ドライバーの安全意識の向上などにも取り組んでいきます。

 Hondaはこれからも、お客様により安心・安全で利便性の高い移動手段を提供するとともに、東南アジアにおける二輪車市場の持続的な成長とさらなる活性化を目指していきます。(後略)

出典:ホンダのリリース(2016年12月12日)

いっきに普及したGrabなどの「スマホで呼ぶバイクタクシー」

東南アジアでは昔から、バイクタクシーは一般的だったし、現在でも多く存在している。インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムでも路上で客待ちをし、値段交渉をして、客をバイクの後ろに乗せて目的地に運んでいる。バイトとしてバイクタクシーをやっている人も多い。

外国人だとぼったくられることが多く、運転も危険で事故に巻き込まれることもあるので、バイクタクシーの利用は推奨しないが、現地人にとっては重要な足であり、日常に根付いた移動手段だ。特に東南アジアの渋滞は物凄く、自動車で移動したら何時間もかかるような道をバイクなら早く到着することが可能だ。

従来はバイクタクシー乗り場のような場所があり、そこに行ってからバイクに乗っていた。だが、現在ではGrabもそうだが、スマホで近くにいるバイクやタクシーを呼んで、来てもらい乗車する。つまり好きな所まで迎えに来てくれる。到着したら、客のスマホに連絡がはいる。スマホでバイクタクシーを呼べるようになって流しのバイクを捕まえたり、バイクタクシー乗り場まで行く必要がなくなった。また、料金も明瞭になった。従来のように外国人だからといってぼったくられることもなくなったので、料金面では安心できる。会社によってはクレジットでの支払いも可能で利便性も向上した(だからといって、慣れない場所で日本人がバイクタクシーに乗るのは危険だから推奨はしない)。

実際に、このようにバイクタクシーが低価格で乗車できて、スマホで呼べば近くを走っているバイクがあらゆる所まで迎えに来てくれるようになったので、多くの人がバイクタクシーを利用している。そのためバイクを所有する人も減少している。かつては東南アジアではバイクを所有することは一種のステータスシンボルのようなところがあって、月賦でバイクを購入していた。

現在でもバイクは生活必需品という人が多い。だが最近では、バイクを購入するなら自動車を購入する傾向が増加している。またバスやメトロなどの公共交通機関も発達してきたので、学生らもバイクで通学するよりも公共交通機関を利用するようになった。バイクだと渋滞、盗難の心配、駐車場の問題、帰りにお酒が飲めないなどの問題があって、バイクよりも公共交通機関の利用が増加している。渋滞は時間に遅れるよりも、渋滞によるストレスで喧嘩や接触事故などのトラブルが多発することが問題になっている。そしてバイクタクシーの増加によって、個人でバイクを所有しなくても良くなっている。

インドネシアでも大人気のGrab、立ちはだかるGO-JEK

インドネシアでも昔から、Ojek(オジェック)と呼ばれるバイクタクシーでの移動が一般的だった。現在でもOjekは多く存在しているが、Grabも進出している。さらに地元のGO-JEKというスマホで呼べるバイクタクシーもある。そしてGO-JEKの方がGrabよりもインドネシアでは人気が高い。GO-JEKはバイクタクシー以外にも荷物の配達、買い物の手伝い、食事のデリバリーなども行っているからだ。GO-JEKでは、客から希望の食事を聞いて買ってきて、それをバイクで自宅やオフィスなどにも届けてくれるので評判がいいようだ。また買い物の手伝いもやっており、客が頼んだ商品をスーパーや市場などに行って購入して家までバイクで運んでくれるサービスも行っており、それが根付いている。Grabも最近ではそのようなサービスを開始したようだが、GO-JEKの方が勢いがある。

もともとOjekの運転手をしていた人たちがそのままGO-JEKやGrabで運転手をやっていることが多いが、サービスはかなりよくなった。例えば従来のバイクでは誰が利用したかわからないヘルメットをそのまま着装せざるを得なかったが、現在ではマスクと頭にかぶるネットを提供してくれる。運転手の緑色のジャンパーも清潔だ。スマホで気軽に呼べる利便性に加えて、このように清潔で安心して乗れるのもバイクタクシーが急速に普及した要因の1つだ。

女性でも安心して乗れるようになった。特に女性は、渋滞に巻き込まれる、危険、故障した時に対応できないと思っているから自分でバイクを運転したくない。バイクタクシーはそのような女性のニーズにもしっかり答えている。なおインドネシアには女性専用のバイクタクシーLadyjekもあり、女性ドライバーで女性客しか乗せないバイクだから、男性ドライバーが嫌な女性客はLadyjekを呼べばよい。

「バイクは持つより呼ぶ時代へ」

東南アジアにおいて「かつては借金してでも欲しかったバイク」だが、今では「安くて便利で安心なバイクタクシーをスマホで呼ぶ方が効率的」だ。もはやバイクを所有することもステータスでもなくなっている。むしろコストばかりかかってしまう。このような背景もあり、東南アジアではスマホで呼べるバイクタクシーが急速に普及しており、一般市民の移動手段として根付いている。

バイクメーカーであるホンダとしても、いつまでもバイクの製造と販売だけに依拠していられなくなるだろうから、このようなGrabとの提携は非常に重要になってくる。ホンダだけでなく、日本のバイクメーカーは東南アジアでは大人気だから、これから他メーカーも何かしら追随してくる可能性が高い。

スマホで次の客を探しているバイクタクシーのドライバー
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食事のデリバリーもバイクタクシーの人気の1つ
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陽気なバイクタクシーのドライバー(ジャカルタ)
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デパートやビルの前では呼ばれたバイクタクシーのドライバーが待っている
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バイクでも交通渋滞に巻き込まれるので、バイクを所有したくない人も多くなった
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スマホで呼んだバイクタクシーの運転手と交渉
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乗車時にはヘアネットとマスクをくれるのも人気
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どこにでも迎えに行くし、送ってくれるので人気があるバイクタクシー
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町中の抜け道を知っているバイクタクシーの運転手は人気がある
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客のところへ向かうバイクタクシーの運転手
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インドネシア、バイクタクシーはスマホで呼ぶ時代に:いっきに普及したGO-JEKとGrab