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モバイルと動画の広告収入が絶好調のGoogle:次の収益の柱はクラウド「Google Cloud」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2016年10月27日、傘下のGoogleの2016年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。

Googleの売上の約90%は広告収入

Alphabetの2016年第3四半期の連結売上高は前年同期比20%増の224億5,100万ドル(約2兆4,000万円)で、純利益は27%増の50億6,100万ドルだった。Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比20%増で222億5,400万ドルで、営業利益は17%増の67億7,800万ドルだった。そしてGoogleを支える広告収入は同23%増の198億2,000万ドルで、Googleの売上の89.1%を占めており、従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていない。今回も特にモバイル、動画が順調だった。AlphabetおよびGoogleのCFOのRuth Porat氏は「モバイルでの検索と動画(YouTube)が広告収入に大きく貢献した。また『その他の新規事業』も成長している」とコメントしている。

Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル検索やYouTube、プログラマティック広告が成長をけん引していることも、最近の決算発表と大きな変化はない。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)

「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。売上高は前年同期比40%増の1億9,700万ドルだったが、営業損失は8億6,500万ドルの赤字だ(前年同期は9億8,000万ドルの赤字)。Google Fiberへの投資コストが嵩んでいる。Ruth Porat氏も「いわゆる『ムーンショット』と呼ばれる不確実なプロジェクトがあるので、初期投資の段階」との見解を示している。

その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)

新たな収入源として期待されるクラウド事業

CFOのRuth Porat氏は今回の決算について「Google Cloudも売上高の大幅な増加に貢献している」とも語っている。現在のGoogleの収益はモバイルと動画(YouTube)の広告収入が圧倒的だが、今後の新たな収益の柱としてクラウド(Google Cloud)も掲げている。

Googleは2016年9月にGoogleが提供している様々なクラウドサービスを「Google Cloud」という新ブランドで再編することを発表した。新たな「Google Cloud」には全世界で10億人以上が利用している「Google Cloud Platform(GCP)」、「Google Apps for Work」から改称した「G Suite」、「Cloud Machine Learning」、「Google Maps APIs」などのクラウドサービスや、これらのクラウドにアクセスするAndroidスマホ、タブレット、Chromebookまでを包含するブランドとして新たに出発した。

さらにGoogleは2016年10月には企業向けにクラウド接続で利用できるデジタルホワイトボード「Jamboard」を発表した。Jamboardはユーザー同士が遠隔地にいても、ホワイトボード上で作業が可能となり、スマホやタブレットからも情報共有が可能で、Googleドライブからドキュメントや作業しているファイル、画像などの追加や編集もできる。2017年から約6,000ドルで販売開始する予定だ。

モバイル、動画は世界規模で見てもGoogleが圧倒的に強く、まさに「Google無双」だ。広告収入に次ぐ新たな収益の柱としてクラウドを掲げているが、クラウドでもGoogleの独り勝ちになってしまうのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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