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フランス東部の小さな村の村長:村の平穏のために「ポケモンGO」でフランス初のポケモン出現禁止を要請

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:アフロ)

多くの人が飽きてしまい世界的にもだいぶ下火になってきた「ポケモンGO」だが、まだ話題には事欠かないようだ。

村でポケモンの出現禁止を要請

フランス中東部の人口800人強の小さな村、Bressollesの村長Fabrice Beauvois氏は「ポケモンGO」を提供しているNianticとポケモンに対して、村にポケモンのキャラクターが出現することを禁止するように行政命令を出した。このように行政が提供会社に対して命令で出現禁止を出すのはフランスでは初めてのこと。

村長いわく「スマホの画面を見てポケモン探しに夢中になっていると、周囲に気が付かなくなり歩行者やドライバーにとって危険であることと、Bressollesは人口800人程度の小さな村だが、夜間に公園などに人が集まってきて騒がしくなる」ことを危惧しているようだ。そして「フランスの街ではどこでもカフェやレストランを開業する時には、事前に村長や当局からの許認可が必要になる。このルールはポケモンが公共空間に出現するならバーチャルな世界でも同じだ」と述べて、「Nianticは全世界を遊び場にしようとしている」と批判している。

村の平穏のために

フランスでは2016年7月から「ポケモンGO」の配信が開始された。ニースでの爆破テロの影響でアメリカや他欧州諸国よりも遅れてのスタート開始だったため、多くのフランス人が楽しみにしており配信直後は多くのフランス人が熱狂しており、交通事故や南フランスでは多くの10代が警察の敷地内に無断立入して逮捕されるなどの事件やトラブルが多発していたが、最近ではだいぶ落ち着いてきた。Bressolles村では、まだ大きな事故やトラブルは起きてないものの、村内にある戦没者記念碑のような神聖な場所でポケモンが登場していたようで、村長としては「村は静かで平穏であって欲しい」との思いがあるようだ。8月上旬にはフランスの第一次大戦の戦没者記念碑がスポットから外されたばかりだ。

村長が行政命令を出したのはNianticとポケモンに対しての「村でのポケモン出現の禁止」であり、Bressolles村の住民に「ポケモンGO」を禁止させているわけではない。ただ村人らも地元でキャラクターが登場しないのであれば、村内で遊ぶ人も少なくなってしまうだろう。

一方、日本では東日本大震災や熊本地震で被災した岩手、宮城、福島、熊本の4県は、行政が主導して「ポケモンGO」を活用した観光集客に乗り出すと発表したり、鳥取や山形でも「ポケモンGO」のポケストップや観光スポットを紹介するサイトを開設して集客しようとしている。フランスのように村でのポケモン出現を禁止するのと、どちらがいいのかは不明だが、そのうち「ポケモンGO」のブームも去っていくだろう。既に世界中でもまだやっている人はポケモン好きの一部だけで、もう飽きてしまった人が非常に多い。フランスの小さな村でポケモン出現を禁止しても、そのうち誰も話題にもしなくなるだろう。また観光集客を「ポケモンGO」に依拠してもいつまでも続かないだろう。特に観光集客をしたいなら一番お金と時間がある60歳以上のリタイアした世代を狙うべきだろうが、彼らの多くは最初から「ポケモンGO」をやってない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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