Googleが設置したインドの駅での無料Wi-Fi、200万人が利用
インド出身のGoogleのサンダー・ピチャイCEOは2015年9月に、自身のブログでインド全土の400の鉄道駅にWi-Fiを敷設することによって、高速インターネットへのアクセスを可能にすることを明らかにした。
既に23駅で導入、毎月200万人以上が駅の無料Wi-Fiを利用
Googleは、インド鉄道(Indian Railway)と鉄道向け通信事業者Railtelと協力して、まず2016年末までに利用者の多い100駅にWi-Fiを敷設していく予定だ。そのWi-Fi敷設も順調に進んでいるようで、2016年7月までにムンバイ、プネ、チェンナイ、ジャイプールなど乗降客が多い23駅で無料Wi-Fiを設置している。
そしてGoogleのサンダー・ピチャイCEOによると駅での無料Wi-Fiの利用者が毎月200万人いることを明らかにした。また無料Wi-Fiにアクセスしている人は、通常の携帯電話のネットワークを利用している時よりも15倍も多くデータ通信を行っているとのことだ。ムンバイ中央駅で提供を開始した時には1週間で10万人が利用したそうだ。ムンバイの人口は約1,200万人だから、もっと多くの人が利用しても良さそうなものだが、それでもGoogleとしては駅での無料Wi-Fiの提供はインド中で需要があることを確信したそうだ。
Googleが欲しい巨大市場インドの広告、人工知能開発に向けたデータ
Googleとしては無料でWi-Fiを提供することによって、スマホでGoogleのサービスを利用してもらうことが目的だ。iPhoneが高価で買えない人も多いインドでは圧倒的にAndroidが強く、スマホも普及しつつあるが、プリペイドSIMが主流のため、無料のWi-Fiがないとネットにアクセスしないという人が多い。
Googleとしてはネットにアクセスしてもらい、検索やGメール、YouTubeを利用してもらわないことには広告収入に繋がらない。Googleの売上の90%以上が広告収入であり、その前提はネットに接続されることだから、Googleとしては通信事業者のようにWi-Fiの利用でお金を取ろうとは考えていない。人口10億人以上を抱えているインドで、誰もが安心して無料でネットに接続してGoogleを利用してもらうためには、インド全土で400駅でのWi-Fiを設置することはGoogleにとって重要な設備投資だ。
さらに10億人以上のインド人から収集できる莫大な情報やデータはGoogleが注力している人工知能を強化していくのに貴重な情報やデータとなる。特に駅で利用は周辺の店舗情報や鉄道での移動情報、買い物の記録など多くの有益な情報収集が期待できる。そこで収集したデータを元に機械学習を通じて強化された人工知能を用いて、さらに適切な広告配信や人工知能を活用した多くのサービスをインドで提供していくことが可能となり、そこで期待できる収入は無料Wi-Fi設置のコストをカバーできると試算しているのだろう。
サンダー・ピチャイCEOは「モバイルは全てをけん引するエンジンだ( Mobile is the engine that drives everything)」と述べている。Googleはインド政府が推進しているインドのデジタル化を促進する「Digital India」を支援しているが、Googleとしては慈善事業で無料Wi-Fiの設置を行っているわけではなく、人口10億人を超えるインドという巨大な市場での将来の収益確保に向けた重要な先行投資なのだ。