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AWSが貢献、収益が安定してきたアマゾン:次は成長著しいインド市場に注力

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

アマゾンは2016年7月28日、2016年第2四半期(4~6月)の決算を発表した。売上高は前年同期から31%増の304億400万ドル。営業利益は177%増の12億8,500万ドルだった。クラウド事業AWSが絶好調で、かつてのような赤字決算ではなく、ここのところ黒字が続きアマゾンの経営が安定してきた。

売上はアメリカ、利益はAWSに依拠

アマゾンの売上高構成比は、北米市場(特にアメリカ)での売上が約60%である。この構成比はここ何年間も大きな変更はない。海外市場はイギリス、ドイツ、日本、フランス、中国、イタリア、スペイン、インド、メキシコ、ブラジル、オーストラリアの11か国を合わせても売上高構成比は30%程度だ。また海外市場は売上高としては前年同期比30%増の98億4,400万ドルと売上は伸びているものの、営業損失は1億3,500万ドルの赤字だ。赤字幅は前年同期の1億8,900万ドルから縮小したものの、まだ投資費用の方が多い。

アマゾンの黒字転換にも大きく寄与し、成長が著しいのは、クラウド事業のAmazon Web Services(AWS)だ。売上高は前年同期比58%増の28億8,600万ドル、営業利益は同135%増の7億1,800万ドルで、アマゾン全体の売上構成は10%だが、その勢いはすごい。

2016年第2四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)
2016年第2四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)

急成長のインド市場に期待:AWS、Primeの次は動画

売上高の約60%を占めているアメリカ市場がアマゾンにとって非常に重要であり、この構造は当面続くだろう。そして今回のアマゾンの決算発表でCEOのJeff Bezos氏が強調していたのがインド市場だ。「アマゾンはここ数か月、世界中で忙しかったが、特にインドは忙しかった。AWS、有料会員サービスPrimeの提供を開始した。インド独自の動画コンテンツも提供していく」とのコメントしている。アマゾンは2016年6月にはインドでAWSに30億ドルの追加投資をしてクラウドを強化、有料会員向けPrimeサービスはインド全土100都市以上で提供を開始した。

さらに今後はPrime会員向けにインドで独自に制作した会員向けコンテンツを提供していく予定だ。インドでは「ボリウッド」(ハリウッドとボンベイの造語)と呼ばれるほどインド独自の軽快な音楽やダンスでお馴染みの地場の映画や動画が大人気である。アマゾンとしてはそのようなインド市場に合わせてインドでオリジナル動画の制作と配信にも注力していこうとしている。

インドの動画配信市場は競争が非常に激しい。インドでは映画、テレビともに多くのコンテンツが流通している。テレビでは朝から晩まで多くインド映画をやっている。またそれらの動画はネットにも大量にアップされている。動画コンテンツの制作は常に自転車操業のように新しいコンテンツを配信していかないといけない。しかも動画は「好き、嫌い、面白い、つまらない」といった視聴者の主観で、加入者の増減が激しくなる。多くの人が満足する動画コンテンツを提供していくためには相当な投資が必要だ。競争激しい市場だが、それでも13億人以上の人口を抱えるインド市場はアマゾンにとっても重要な市場だ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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