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広告収入増で絶好調のGoogle「YouTubeはテレビよりも広告の効果は80%以上」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2016年4月21日、傘下のGoogleの2016年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。Alphabet設立後としては3回目となるGoogleの業績発表である。Googleと「それ以外の事業(Other Bets)」の業績を分けて発表としては2回目となる。

Googleの売上90%は広告収入

Alphabetの2016年第1四半期の連結売上高は前年同期比17%増の202億5,700万ドルだった。Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比17%増で200億9,100万ドルだった。そして広告収入は同16%増の180億2,000万ドルで、Googleの売上の90%を占めており、従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていない。

Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル検索やYouTube、プログラマティック広告が成長をけん引していることも、最近の決算発表と大きな変化はない。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)

「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。営業損失も前年同期の6億3,300万ドルから8億200万ドルに膨らんでおり、Googleが広告で稼いだ資金を新規分野に多額の投資をしている。

その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失(Alphabet発表資料を元に作成)

YouTubeはテレビよりも80%以上、広告の効果がある

Googleは2016年4月に、傘下の「YouTubeはテレビよりも80%以上、広告の効果がある」とのレポートを発表した。GoogleのMatt Brittin氏によると、欧州8か国で56の事例からこのような結果を導き出したとのことで「広告主は現在の6倍の予算をYouTubeへの広告出稿に回すべきだ」と主張した。2015年10月にはGoogleは「若者へリーチしたいのであれば、現在テレビでの広告予算の24%をYouTubeへの広告にシフトすべきだ」と自信を見せていた。

またGoogleは「これはYouTubeとテレビの争いではない、ただ広告主はどこにいくらかけるべきかを知ることに役立つだろう(this isn't a war between YouTube and TV, its just trying to help marketers know how much to spend there)」と述べた。

特に若い人は世界的に見ても、テレビよりもYouTubeを見ている人が多いだろう。自分が見たい動画をYouTubeで見た方が楽しいという人は多く、あらゆる動画がアップされているYouTubeは世界中で暇つぶしの良いツールにもなっている。そして多くの動画がYouTubeにアップされているので、動画を検索する時はまずはYouTubeで検索する人も多い。

放送時間や場所、受信機に縛られるテレビに比べたら、たしかにスマホでどこでも動画が見ることができるYouTubeは若者だけでなく多くの人にとっても魅力的だ。日本でもテレビは以前に比べるとだいぶ見られなくなったが、YouTubeやネットでの動画視聴は増加している。

そしてテレビに出稿しても「CMになったらチャンネルを変えられたり」、「録画していたら早送りしてしまうので見られないCM」よりも、「スキップまで数秒は見させられるYouTubeでの広告」の方が効果的だろう。たしかにGoogleが主張するように、いつまでもテレビに出稿するよりもYouTubeの方が広告効果は高いかもしれない。ますます世界的な規模で広告がGoogleやYouTubeに集中してしまう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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