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イスラエル「緊急通報は動画で連絡するアプリ」導入へ:警察、消防、救急は動画で通報する時代は来るのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(Reporty)

イスラエルのスタートアップReportyが、緊急通報時に動画でも通報できるアプリとシステムを2016年3月に開発した。Reportyはイスラエルで国防大臣や首相を務めたエフード・バラック氏が会長を務めている。

音声だけでは伝わらない現場の状況も通報が可能に

イスラエルも日本や欧米と同じように、緊急通報は電話だけだった。電話の音声通話だけだと聞き取れなかったり、災害や事件、事故の規模がどの程度か把握できない、場所の特定が難しいなどの問題がある。音声だけでは伝わりにくい、状況が把握できないことから、通報者がスマホで動画を撮影したり、テレビ電話機能で状況を見せながら通報することができるようになる。また通報者からの動画によって、現場の状況を把握して適切な対応が取れるようになるとのことだ。さらにこのアプリでは通報者の居場所も精確に確認することができるらしい。

いざという時に使えるアプリなのか

特にイスラエルはテロや危険物と思われる物の発見と通知など、緊急通報の連絡は多いのだろう。日本では緊急通報は年間900万件らしいが、アメリカでは緊急通報(911)は年間で2億4,000万件もある。

しかし、緊急通報をするシーンが一生のうちに何回あるのだろうか。そして緊急通報しなくてはならない時は冷静ではいられない。そのような時にアプリを立ち上げて、動画を撮影しながら状況説明をしながら通報できるのだろうか。緊急時になってからアプリをダウンロードするならば、電話(音声通話)ですぐに連絡した方が早そうだ。

たしかにLINEなどのアプリでビデオ動画での会話を利用している人も多いだろうし、現在のスマホや4G環境ならかなり高画質な動画で連絡できるだろうから、動画での通報は音声に比べて状況把握などのメリットも大きいが「一生のうちに何回通報するか、いつ通報するかわからない緊急通報」のために、アプリをダウンロードしておかなくてはならないのは面倒だ。さらに「いざ、緊急時に直面したら、すぐにそのアプリを起動して慌てずに通報できるような日常からの練習」も必要になるだろう。いざという時にすぐに使えるアプリでないと意味がない。

日本でも緊急通報が動画で撮影しながら通報する時代が来るのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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