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米国の高校生、ホロコーストを想起するビアポンの写真をSNSで公開:未成年飲酒よりも反ユダヤ主義で炎上

佐藤仁学術研究員・著述家
ホロコーストを想起させるビアポンの準備をする高校生 (NJ.com)

ビアポン(Beer Pong)というゲームがある。テーブルの両端に置かれたビールまたはアルコールや水が入ったカップに、ピンポン玉をテーブルの両端から投げ入れあうゲームだ。アメリカやアジアでも若者に人気があり、パーティなどでもよくやるゲームだ。

2016年4月にニュージャージー州のプリンストン高校の高校生らがビアポンをやっていて、その写真をスナップチャットやTwitterなどSNSで公開して、それがアメリカで炎上しており、さらにニュースとして多くのメディアで取り上げられている。

未成年飲酒よりも反ユダヤ主義で炎上

高校生が明らかにビールを注いでる写真をスナップチャットやTwitterで公開しており、未成年飲酒も問題だが、アメリカでは高校生でも大学生でもこのような飲酒などの写真が公開されることはよくある。

アメリカ版バカッターともいえる(NJ.com)
アメリカ版バカッターともいえる(NJ.com)

今回も17歳の高校生の投稿がきっかけだが、日本でいうところの「バカッター」のようなものはアメリカにもあるので、高校生の飲酒写真が実名、顔出しでSNSにアップされたくらいではそれほど炎上しない。教員や親から怒られたり処分される程度でここまで大きなニュースになったりしない。

炎上しているのは、このビアポンのグラスの並べ方が「ナチスのカギ十字」のマークと「ユダヤのダビデの星」のマークになっていたことで、ホロコーストの犠牲者に対して失礼であり、反ユダヤ主義を想起するということである。

実は前からある「Holocaust Pong」(ホロコーストポン)

しかしこのナチスとユダヤのマークのビアポンは、ニュージャージーの高校生が初めて考えたものではない。アメリカでは今でも反ユダヤ主義は残っている。実は以前からもこのようなグラスの並べ方をしてビアポンのゲームを競うのはあり、これらは「Holocaust Pong」(ホロコーストポン:ホロコーストとビアポンでの造語)や「Alcoholocaust」(アルコーロコースト:アルコールとホロコーストの造語)と呼ばれている。ナチスのチームが勝つのを「アウシュビッツ」と呼んだり、ユダヤ側のチームには「アンネ・フランクカップ」というのがあるなど、「Holocaust Pong」独自のルールもあるようだが、どれもホロコーストの犠牲者や家族にとっては許せないような内容である。今回は高校生の飲酒と一緒なので、炎上もより大きく、ニュースにもなっているが、以前にも「Holocaust Pong」の写真がTwtitterでアップされて炎上したことはある。

高校生が「Holocaust Pong」をしているところをネットにアップしたら、どのような反応があるのか想像できなかったのだろうか。画像が消えるスナップチャットだから大丈夫と思っていたのかもしれない。まさか他にもアップされているとは思っていなかったのかもしれない。それとも既に酔っぱらっていたのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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