Google、インドで気球ネット「Project Loon」交渉中:狙いたい巨大市場だがカーストも
Googleはインドで、気球でのネットに接続する「Project Loon」を導入しようと、現地の通信事業者と交渉をしていると報じられている。Googleは2013年から気球を活用してネット接続をしようとする「Project Loon」の実験を行っている。これは通常の通信事業者が基地局やタワーで電波を吹いてネットへの接続をしているものを、基地局やタワーでなく気球で電波を吹かせようとするものである。2015年10月にはインドネシアの通信事業者と実験を開始した。
「Project Loon」では4G(LTE)の周波数を用いてネット接続を提供しようとしている。そのためにはGoogleだけでは提供することができないので「Project Loon」推進に向けて、インドの通信事業者BSNLなどと交渉をしていると報じられている。またインドの当局も「Project Loon」の推進には協力的とのことだ。
Googleが狙う残り10億人のネット接続
Googleは気球でのネット接続「Project Loon」を導入したらインドの農村地帯を中心に、まだネットに接続できない約8〜10億人の市場に向けてネット接続を目指そうとしている。
Googleはインドではすでにインド全土の駅で無料Wi-Fiの提供を行って、インドでのネット接続の普及を行っている。またインド出身のGoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏もインドでのネット接続普及をモディ首相らにコミットしている。インドは人口13億人を超えて、中国に次いで世界2位である。スマホもかなり普及しており、MicromaxやLavaなどといった地場メーカーも台頭してきている。それでもまだインドでネットに接続できるのは4億人程度である。つまりインドではまだネットに接続できない人の方が多い。
Googleが欲しいのは広告収入、慈善事業ではない
Googleが気球を利用したネット接続「Project Loon」を推進するのも、廉価版Android普及に取り組むのも、インドの駅で無料Wi-Fiを提供するのも、慈善事業ではない。Googleの収入の90%以上は広告である。広告収入をさらに増加させるためにも多くの人に検索やGメール、YouTubeなどGoogleのサービスを利用してもらう必要がある。そして多くの人がGoogleのサービスを利用することによって、利用者の情報も吸い上げることによって、利用者に応じた広告配信も行うことができる。
そしてGoogleが広告収入を上げるためには、ネットに接続している必要がある。Googleとしては、Googleのサービスを利用してもらい、そこから広告収入を得るためにも、インドでのインフラ整備に注力していきたいところだ。
農村部ではまだ残るカースト
Googleにとってはまだ約10億人がネットに接続されていないインドは巨大な市場だ。但し、インドの農村部ではまだカーストが根強く残存しており、生活が改善されていない人も多い。ムンバイやデリーが急激に発展しているのとは対照的に、農村地域には昔と変わらない風習と伝統の中で生活をしている人もまだたくさんいる。カーストが起因となるインドでの事件や問題については日本でも多く報じられている。
インドでは大量に安価な中古端末が流通しており、プリペイドのSIMカードはあらゆるところで入手可能である。現在でも農村地帯で既にネットワークが整備されており、中古端末とSIMカードさえあればネットには接続できるだろうが、実際には農村部の方ではネットに接続していない人が多い。そのようなカーストが残存しているインドの農村地帯で、インフラが整備されたからといって都市部のようにスマホが普及して、そこにいる多くの人がネットに接続するかどうかは不明だ。