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新興国市場向けアプリ「Facebook Lite」が利用者1億人突破:新興国での売上拡大を狙う

佐藤仁学術研究員・著述家

Facebookは2016年3月9日に、新興国市場をターゲットにした軽量版アプリ「Facebook Lite」が2016年6月のリリースから約9カ月で月間アクティブユーザー数(MAU)で1億人を突破した。

新興国市場ではポータルとなったFacebook

Facebookの全世界でのアクティブユーザー数が15億人なので、世界のFacebook利用者の15人に1人が「Facebook Lite」を利用していることになる。

現在、新興国でも地場メーカーの台頭によってスマホが急激に拡大しており、誰もがスマホを持つようになり、彼らの多くがスマホでFacebookを利用している。地場メーカーの格安スマホなので、50ドル~100ドル程度であるため、決して端末のスペックが良いわけではない。そのため「Facebook Lite」はAndroid向けのみで、高価なiPhone向けにはない。また新興国では所有しているSIMカードも2G対応であることが多いことから、高速通信にも適していないことがある。とはいえ新興国でもWi-Fi環境が充実しているため、彼らの多くは無料または安価なWi-Fiスポットに行き、動画視聴などを楽しんでいる。

彼らはスマホを触ると取りあえずFacebookにアクセスして、フィードに流れている情報を見ている。ニュースやお気に入りの情報のほとんど全てをFacebookで入手しており、さらに友達が「いいね」をした記事やら写真を楽しんでいる。日々のニュースはほぼFacebookから入手している。新興国市場では「スマホでまずアクセスするのがFacebook」であり、Facebookは新興国の人々にとって、まさに「ポータル」となっている。

「Facebook Lite」は56言語に対応し、ブラジル、インド、インドネシア、メキシコ、フィリピンといった巨大市場での利用者が多い。地域別の利用者で見ても、いわゆる新興国が集中している「アジア太平洋地域」と「その他地域」でFacebook利用者の65%を占めており、新興国市場はFacebookにとっても重要な地域である。

▼Facebookの地域別MAUと比率(2015年Q4)

(公開情報を元に作成)
(公開情報を元に作成)

新興国での売上拡大に向けて

「Facebook Lite」が1億人突破して、これからも新興国でのFacebook利用者は増えていくであろう。特に「Facebook Lite」のダウンロードが多い巨大新興市場の5か国(ブラジル、インド、インドネシア、メキシコ、フィリピン)では安価なスマホのおかげで若者のほとんどがスマホを所有しており、Facebookが大好きだ。暇さえあればスマホでFacebookにアクセスして情報をチェックしたり、投稿をしている。

そして、Facebookの売上は95%以上が広告収入である。しかし利用者が急増している新興国地域はまだ売上に大きな貢献していない。売上のほとんどがアメリカである。北米と欧州市場で稼いだ売上を新興国市場の開拓に投資している。

新興国でのFacebook利用者の基盤は固まりつつある。そろそろFacebookとしても新興国市場の広告売上を拡大していきたいフェーズである。

▼Facebookの地域別1人当たりの収入(2015年Q4)

(公開情報を元に作成)
(公開情報を元に作成)

▼Facebookの地域別広告売上と比率(2015年Q4)

(公開情報を元に作成)
(公開情報を元に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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