Facebook社内で「黒人差別発言」にユダヤ系ザッカーバーグが言及:米国IT企業の黒人従業員は数%

(写真:ロイター/アフロ)

Facebookの本社の壁には従業員が自由に落書きできるスペースがあるようだ。2016年2月にそのFacebook社内の壁に「black lives matter(黒人の命は大事だ)」と書かれていたが、それが「all lives matter(皆の命が大事だ)」に書き換えられていたそうだ。

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ザッカーバーグ、社員に向けてのメッセージ

それに対してFacebookのCEOのザッカーバーグ氏は、従業員に向けて、このような悪意ある行為はやめるように呼びかけた。そして書かれたものを消すことは無言の主張で卑怯な行為であると述べ、このようなことが社内が起こることに対して失望しており、怒りを露わにしている。

この問題がアメリカでは大きな話題になっている。米国Gizmodoがザッカーバーグが書いた社内に宛てたメッセージを掲載している。このメッセージは本人が出したものだと取材で認めたらしい。

ザッカーバーグが社内にあてたメッセージ(Gizmodo)
ザッカーバーグが社内にあてたメッセージ(Gizmodo)

アメリカIT企業の黒人の従業員は僅か

ザッカ―バーグはメッセージの中で、アメリカの黒人が抑圧と差別に今でも直面していると説明している。そして「Facebookは誰もが尊敬をもって扱われるべきコミュニティであるべきだ」とコメントしている。

しかしFacebookにも黒人の従業員は全社員の2%しかいない。アメリカのIT系企業はどこでも黒人が数%程度でヒスパニック系よりも少ない。Appleですら黒人の従業員は全体の8%程度で、10%にも満たない。以下の5社では従業員の半数以上が白人で、Apple以外のメジャーなIT企業では白人とアジア系で80~90%を占めている。

▼アメリカのIT企業の男女および人種構成

(各社公開情報を元に作成)
(各社公開情報を元に作成)

(参照)IntelAppleFacebookGoogleMicrosoft

アメリカにおける黒人とユダヤ人の長く微妙な関係

ザッカーバーグCEOはユダヤ系である。アメリカ社会においてユダヤ人と黒人の関係は非常にセンシティブだ。1900年代~20年代にかけて、当時ロシアや東欧で差別、迫害を受けていたユダヤ人が大量にアメリカに流入してきた。さらに1930年代以降はナチスに迫害されていたユダヤ人らがアメリカに来た(ナチスに迫害されていた頃は、アメリカは欧州のユダヤ人を完全に受入れなかった)。

当時ロシアや欧州で差別を受け、迫害されて虐げられていたユダヤ人はアメリカに来て、驚いた。それは当時のアメリカ、特に南部では「白人専用」と記されたベンチがあり、そこには白人とみなされたユダヤ人は座ることができた。黒人は座れなかった。ナチス支配下の欧州では「アーリア人専用」と書かれたベンチに座ることを許されなかったユダヤ人は、アメリカでは大学入学などに制限は設けられたものの、黒人よりも上の地位に一挙に押し上げられた事実に感慨を覚えた。

最近では緩和しているが一時はユダヤ人と黒人は緊張関係にあった時期もある。ニューヨークでは1920年代から黒人の間では反ユダヤ主義があった。それは黒人と接するのは白人の中でも、移民でアメリカに来たユダヤ人の商店経営者や地主、学校教師たちが権力の代表として黒人に直接接して、彼らの日々の暮らしに影響を及ぼす存在だったからだ。

黒人とユダヤ人の緊張関係が頂点に達したのは1990年代初期にブラックムスリム団体「ザ・ネイション・オブ・イスラム」が出版した「黒人とユダヤ人の秘密な関係」という書物でユダヤ人は黒人奴隷貿易に深く関わった罪があると述べた時と言われている。

いつ差別の矛先がユダヤ人に向かってくるかわからない恐怖

そして黒人もユダヤ人もアメリカでは長年にわたって差別される対象であったし、現在でもアメリカには反ユダヤ主義の風潮はある。アメリカだけでなく世界中で、黒人やムスリムなど特定の人種、民族に対する差別が存在しているということは、その人種差別の矛先がいつまたユダヤ人に向かってきて、ホロコーストの悲劇が再来するのではないかという意識が世界中のユダヤ人にはある。つまりユダヤ人としては「黒人差別の風潮がある社会は、いつユダヤ人差別にその矛先が変わるかわからない」という恐怖心が歴史的にあるのだ。

「誰もが尊敬されるべきコミュニティ」の構築はユダヤ系のザッカーバーグにとっては非常に重要なことであり、社内の人種差別は看過できないことなのだろう。