ハンガリーの38歳男性:Facebookに「反ユダヤ主義とホロコースト否定」の発言で罰金または禁錮刑

(写真:ロイター/アフロ)

ハンガリーに住む38歳の男性Norbert Juhos氏は2015年8月に、Facebookで「反ユダヤ主義」と「ホロコースト否定」の書き込みをした。ハンガリーではホロコーストの否定を公共の場ですることは法律で禁止されており、最高で禁固3年となる。

Norbert Juhos氏は 800,000フォリント(約35万円)または400日間の禁固となることの判決が言い渡された。ハンガリーのユダヤ系財団TEVによると、最近では50人くらいがホロコースト否定の発言をしているとのことで、そのうち5人が有罪判決を受けている。

ハンガリーの「ホロコースト否定」が犯罪になる法律は2010年に制定されたが、それ以降裁判所では「ホロコースト否定」発言をする人には、ハンガリー周辺にはたくさん残っている収容所跡地訪問や、ホロコースト関連の博物館の見学、またはホロコースト関連の本を読むように勧めている。

ハンガリーで複雑なユダヤ人への感情

ナチスが政権をとった1930年代において、ハンガリーの開業医の半分以上、弁護士の半分以上、貿易業者の3分の1、そしてジャーナリストの3分の1近くがユダヤ人だった。ユダヤ人は当時のハンガリーの経済活動において中心的な存在だった。つまりハンガリーにいたユダヤ人の大部分は中産階級であり、ハンガリーにおける全ての専門職と商業活動の中心にいた。

そのため当初、ハンガリーはユダヤ人財産の強制収用の問題には慎重に取り組んでいた。ハンガリーには約72万人のユダヤ人が在住していたが、当時ハンガリーの経済活動に欠かせなかったユダヤ人を引き渡せというナチスの要求に、ハンガリー政府は長い間抵抗していたが、1944年になってようやくハンガリーでも殺戮機構が稼働、それからは恐ろしいほど徹底的に最後まで猛威を振った。そして60万人以上のハンガリーのユダヤ人が主にアウシュビッツで殺害された。

最終的にハンガリー政府はユダヤ人の財産を没収し、政治目的に役立てようとした。その過程において大蔵省や警察、憲兵隊はユダヤ人が経営する事業所や商店の高価な物品を押収していった。その中でユダヤの家財道具はハンガリー民衆の取り分として残された。そのため政府の反ユダヤ政策による、合法的な略奪に励む民衆も多くいた。中産階級ユダヤ人の家財道具は高級品が多く、戦時中ということもありハンガリー民衆の人気を博した。

特に地元の教師や官吏は警察がユダヤ人家庭を家探しする際の補助要員として訓練された。ハンガリーの各都市でユダヤ人がゲットーや収容所に移送される前、ユダヤ人が立ち退くと、こうした地元のハンガリー人、つまり一般市民が空き家になったユダヤ人の家じゅうから金品を探し回った。つまり移送を待つ憐れなユダヤ人が隠し持っていた物は、ナチスや政府そしてハンガリー人によって強奪された。富裕なユダヤ人は「金製品や宝石を自宅に隠し持っていたり、友人や隣人に保管してもらっているのではないか」とハンガリー人憲兵隊や地元住民から極めて残忍野蛮な方法で拷問された。

このような歴史的背景もあり、ハンガリーでは今でもユダヤ人とハンガリー人の関係は複雑で微妙な思いが交錯している。

誰もが簡単に情報発信できる時代に求められる想像力

ドイツをはじめ多くの欧州諸国では「ホロコースト否定」を禁止する法律が導入されている。市民がホロコースト被害者に深い同情を寄せると同時に、反ユダヤ主義者が憎悪を表明しホロコーストが再興することを阻止する狙いもある。つまり今でも反ユダヤ主義が勃興する土台が欧州にはないとは言えないのだ。

FacebookやTwitterのようなソーシャルメディアが登場してから、誰もが実名で、思ったことを発言できるようになった。そして自分の思いをクリック1つで全世界に発信することができる時代である。

最近の欧州では反ユダヤ主義よりも、中東から大量に流入してくるムスリムへの脅威が大きくなってきており、彼らに対する危機感から来る複雑な思いもネットやソーシャルメディアに溢れている。

どこまでなら「発言の自由」として許容できるだろうか、この発言で傷つく人がいるだろうか。誰もが簡単にネットで自分の意見を発信できるようになった現在、書き込みやコメントをする前にその影響を考えてみる、「ちょっとした想像力」が求められている。