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Google「Android One」スマホ:メーカーの開発しやすい仕様に仕切り直し

佐藤仁学術研究員・著述家

Googleは新興国を中心にまだスマートフォンを持っていない「次の50億人(next five billion)」を対象に、低価格なスマートフォンを提供することを目指して、2014年6月に「Android One」OSを発表した。そして2014年9月から「Android One」OSを搭載したスマートフォンはインドの地場メーカーからの販売を皮切りに、アジアやアフリカなどの新興国や欧州の一部の国で次々と地場メーカーから約100ドル程度で販売されている。

■「Android One」スマホは全世界で300万台販売

インドで2014年9月にMicromax、Karbonn、Spiceの3社の地場メーカーから「Android One」スマートフォンが販売されたが、合計販売台数は1年で約120万台、インドで販売された50〜100ドルのスマートフォンのうち3.5%程度しかなかった。また全世界19か国で「Android One」スマートフォンの販売台数は300万台だった。

■もっとメーカーが「Android One」スマホをしやすい環境へ

「Android One」スマートフォンはGoogleが新興国でのAndroid OS普及に向けて、新興国の地場メーカーに開発と製造を推進してきた。しかし、Googleの仕様では部品のほとんどが限定された部品間メーカーの中のうち1〜2種類の中からしか選べず、メーカーにとってスマートフォン開発と製造に自由度がなく、端末の差別化を出すのが難しかった。

そこで、Googleではもっと自由に部品を選べるように、新たな「Android One」スマートフォンの開発に向けて仕切り直しを行っていると報じられた。これからはメーカーが複数の部品メーカーから複数の部品を調達し、それらから選択できるようになる。例えばカメラモジュールなら5種類以上の部品からメーカーが自社で製造するスマートフォンに合わせて選択できる。またメインのプロセッサにQualcommの製品を選択する必要がなくなり、Media Tekなど他メーカーの選択の余地が拡大する。メーカーが自由に部品を選ぶことができるようになり、製品と価格での差別化を出していくことができるようになる。メーカーが開発しやすい環境を整備することによって「Android One」スマートフォンの普及に弾みをつけていきたいとGoogleは考えている。

■新生「Android One」スマホ、まずはインドのLavaから

そして新たな仕様での「Android One」スマートフォンはインドの地場メーカーLavaから数カ月以内に販売される予定であると報じられている。2009年に設立されたLavaはインドで常に端末出荷台数の上位に登場するインドの地場メーカーである。

インドでは「Firefox OS」のスマートフォンが30ドル台で販売されており、100ドルのミドルエンド端末でも高価な部類になりつつある。スマートフォンの端末での差別化を出すのは難しくなってきている。特に使い勝手での差別化はほとんどないので、カメラや電池の持ちが新興国のユーザーにとっての端末選択基準になっている。新たな仕様でメーカーに開発、製造の自由度が広がった「Android One」は新興国に普及していくだろうか。

(主要な「Android One」スマートフォン販売国。公開資料を元に作成)
(主要な「Android One」スマートフォン販売国。公開資料を元に作成)
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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