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Googleの親会社Alphabet、気球でネット接続「Project Loon」インドネシアで実験

佐藤仁学術研究員・著述家

Googleの親会社であるAlphabetは2015年10月28日、気球を活用したインターネット接続のプロジェクト「Project Loon」において、インドネシアの通信事業者3社と提携してインドネシアで実験を行っていくことを明らかにした。

Alphabetと提携して、インドネシアのTelkomsel、Indosat、XL Axiataのトップ3社は2016年にもインドネシア国内で気球を利用した試験を開始する予定。具体的な時期や場所は明らかにしていない。

■気球で効率的にネット接続

「Project Loon」は新興国や途上国でのインターネット接続を目的としてGoogleが推進している気球によるWi-Fi接続のプロジェクトで2013年6月から行われている。ニュージーランドやブラジルでも実験は行われてきた。地上から約20キロ上空の成層圏に通信環境を中継する気球を飛ばし、1つの気球で地上の直径約40キロのカバレッジエリアでインターネット接続が可能となる。但し「Project Loon」での気球によるインターネット接続は、まだどこの地域でも実用化に至ってない。

インドネシアは人口が2億5,000万人いるが、インターネットに接続できるのは3人に1人だけである。また世界最大の島国で17,000以上の島で形成されているため、通信インフラが全土に行き届いているわけではない。インドネシアのような広大な島国や人口密度が小さい地域では、基地局タワー等の地上設備を充実させるよりも、気球や通信衛星を用いた方がコスト・カバレッジ・容量の面で効果的である。

■ネット接続の先にある収益が欲しいGoogle

Googleの親会社Alphabetは新興国での気球によるインターネット接続「Project Loon」を慈善活動でやっているわけではない。GoogleとしてはGoogleでの検索、YouTubeでの動画視聴などを通じて広告収入に結び付けたい。ネットに接続されないとそもそもGoogleのサービスを利用できない。Googleのサービスを利用する、つまりGoogleにとって収益になるためには、インターネットに接続されることが重要である。

Googleの売上の90%以上が広告収入である。インドネシアにはまだインターネットに接続できない人が約1億7,000万人は存在しており、Googleにとっても巨大な市場が残っている。

(Google)
(Google)

▲左からRiriek Adriansyah氏(TelkomselのCEO)、Dian Siswarini氏(XL AxiataのCEO)、Alexander Rusli(IndosatのCEO)、Mike Cassidy氏(Loon ProjectのVP)、Sergey Brin氏(AlphabetのPresident)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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