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Twitter、インドネシアでようやく本格的に市場開拓:人気があるうちに確立しておきたい収入源

佐藤仁学術研究員・著述家

インドネシアでは若者を中心にTwitterの人気は高い。Twitterは、そのインドネシアに1年前に事務所を設立して、インドネシアでの営業を強化する予定だったが、CEOのDick Costolo氏が辞任を表明するなどの「お家事情」があり、インドネシアでの活動は停滞していた。そのインドネシアで、9月1日にRoy Arnold Simangunsong氏が事務所のヘッドとして就任し、ようやく事務所で人材募集を始めたと報じられた。

Twitterは2015年6月にシンガポールにアジア太平洋地域の地域本部の事務所を設置し、販売、マーケティングやイノベーションの拠点としたばかりである。

今回、増員されるTwitterのインドネシアの事務所では、広告代理店やスポンサー企業への営業、新サービスに向けた提携や、マーケティングを行っていくそうだ。インドネシアは人口2億5,000万人以上で、スマートフォンも急速に普及している。ジャカルタでは若者を中心にほとんど全員がスマートフォンを利用している。コンビニやコーヒーショップ、公共交通の中、大学などでは、多くの若者がスマートフォンの画面を見つめている。

■あらゆる情報が発信される、インドネシアで大人気のTwitter

インドネシアの若者らの間ではTwitterが大人気である。個人でもTwitterで多くの写真やら動画を発信している。さらに、レストランや多くの店舗もTwitterで積極的に情報発信を行っている。ニュースやテレビドラマ、バラエティ番組などメディアもTwitterを活用して、ニュースや情報を発信している。ほかにも芸能人やアイドルもTwitterでファンに向けて情報発信をしている。インドネシアで若者に人気があるアイドルグループJKT48のメンバーも、ほぼ毎日Twitterで情報発信をしている。

フォロワーの多くがそれらのコメントにリプライや、リツイートをしてコミュニケーションを楽しんでいる。日本のAKB48から移籍してJKT48で大人気の仲川さんは流暢なインドネシア語でつぶやいて、フォロワーは113万を超えており、現地でも大人気だ。他のメンバーのTwitterも30万〜100万のフォロワーがいて盛況だ。

Twitterも大人気のJKT48の仲川さん (C) JKT48 Project
Twitterも大人気のJKT48の仲川さん (C) JKT48 Project

このようにTwitterはインドネシア人にとって重要な情報のプラットフォームとなっている。インドネシアでは検索してニュースを探しに行ったり、ニュースアプリを利用するよりも、TwitterやFacebookなどソーシャルメディアに流れているニュースや情報、友人や有名人がツイート、リツイートしたコメント、情報を見ていることが多い。

また最近では動画の投稿も多くなっており、Roy Arnold Simangunsong氏によるとここ3か月間でインドネシアのTwitter利用者の40%が動画を投稿しているとのこと。インドネシアの有名人らも写真だけでなく、動画で音声や動く姿をフォロワーに届けている。動画は今後も確実に増加していくことが想定されている。

■Twitterだけでない、たくさんあるコミュニケーションのプラットフォーム

それでもスマートフォンが急速に拡大してきたインドネシアではTwitterだけでなく、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアの人気もあり、さらにメッセンジャーアプリもMessenger、WhatsApp、LINE、WeChatなどが大人気である。LINEもインドネシア市場を重要な市場と位置付けており、たしかにLINE利用者は多いが、最近ではFacebookのMessengerが多くのインドネシア人に利用されており、人気が高くなってきている。インドネシア人は移り気で、新しいものと、みんなと同じものが大好きだ。

かつてインドネシアではBlackBerryが大人気で、インドネシアでは「BlackBerryはスマートフォンの代名詞」だった。そしてBBM(Black Berry Messenger)の人気が高かったが、現在ではスマートフォンのほとんどがAndroidで、地場メーカーや中国メーカーの安い端末が大量に流通されており、BlackBerry端末もBBMの利用者も減少した。

■インドネシアで人気があるうちに収入源を確保したいTwitter

Twitterは現在、世界での月間アクティブユーザー数は3.16億人である。Facebookの14億人に比べると非常に小さい。収益の90%以上を広告に依拠しており、今後もそのビジネス構造は当面変わらないだろう。2015年第2四半期(2015年4~6月)の決算では売上高は前年同期比61%増の5億200万ドルだが、研究開発費などが嵩んで、純損失(赤字)は1億3,700万ドルだった。そして広告売上全体の約63%はアメリカ市場である。

Twitterもインドネシアで、いつまでも現在のような人気を維持できる保証はどこにもない。Twitterはインドネシアでの本格的なマーケティング活動が1年遅れたが、インドネシアで人気があるうちに、同市場において広告収入の基盤をしっかりと確立しておき、さらに新たなサービス開発や提携をしておきたいところだ。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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