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GoogleとMIT:カメラ撮影時の反射物や邪魔なフェンスを削除:明確な写真が欲しいGoogle

佐藤仁学術研究員・著述家

自動車や電車に乗っていて、窓越しに撮影するとガラスに自分のカメラや車内の反射物が映ってしまって、せっかくの風景がきれいに撮影できないでイライラしてしまうことがある。ホテルや観光地でも窓越しに撮影して窓ガラスに映る部屋の中や電気が映ってしまい、せっかくのシャッターチャンスなのに残念な思いをしたことがある人も多いだろう。

そのような窓越しに反射してしまった物体や、フェンス越しに撮影した際にフェンスを削除する技術をGoogleとマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が開発している。他にも窓ガラスの水滴も除去できるようだ。

現在はまだ実験段階で、具体的な商用時期はまだ見えていないが、旅行先での写真撮影には便利でシャッターチャンスも増えるだろう。

▼左から、屋内の反射物が映っている写真、屋外の写真、屋内の写真。反射物を取り除くことによって写真が鮮明で明確になるようだ。

(解説動画より)
(解説動画より)

■反射物やフェンスなど邪魔な物を削除して少しでも明確な写真が欲しいGoogle:写真認識技術はまだこれから

収益の90%以上が広告収入のGoogleは世界中からあらゆる情報を集めて、ユーザーに適切な広告を配信していきたい。特にソーシャルメディアでFacebookやTwitter、Instagramに大きく差をつけられているGoogleにとってユーザーの写真は重要な情報源である。少しでも精確で明確な写真が欲しい。

Googleは2015年7月に黒人が撮影してアップした写真をゴリラと機械が認識して、タグ付けしてしまって謝罪した。機械と技術に罪はないが、センシティブな問題からアメリカだけでなく世界中で大きな話題となった。写真認識の技術はGoogleとしてもまだまだこれから開拓していかなければならない分野である。

そして写真にはユーザーへの適切な広告配信につながる重要な要素(例えば、いつ、どこに行ったのか、誰といるのか、どういう料理が好きかなど)が含まれている。多くのユーザーは旅行だけでなく日常の些末な写真を気軽にFacebookやTwitter、Instagramにアップして友人のタグ付け、場所情報を入力して公開している。一見些末に見えるような写真でも、Googleにとっては喉から手が出るほど欲しいはずだ。

今回GoogleがMITと行っている「窓越しに反射してしまう物体や、フェンスなどを削除する技術の開発」も、明確な写真情報を取得することによって、適切な広告を配信して将来の収益基盤を確立するためにも重要なことであろう。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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