インドにiPhone工場設置か:インドでiPhoneは売れるか?

台湾のEMS(電子機器受託生産メーカー)大手の鴻海科技集団がインドでAppleのiPhoneの製造を行う交渉が進んでいると報じられた。鴻海科技集団もAppleも公式にはインドで製造することは明らかにしていない。

現在、鴻海科技集団は傘下の富士康科技が中国でiPhoneの製造を行っているが、中国人労働者の賃金上昇の問題があげられている。そのためインドで製造を行うことによってコスト削減を目指すことと、インドのスマートフォン市場におけるiPhoneのプレゼンスの向上を目指しているようだ。

■インドでの携帯電話出荷のうちスマートフォンはまだ35%

中国だけでなくインドにも製造拠点を設置することによって、中国の人件費増に対応したコスト削減や製造地の分散といったリスク管理にはなる。ただし、インドでiPhoneの製造を行ったからといってインドのスマートフォン市場でiPhoneは売れるのだろうか。

インドでは携帯電話出荷総数のうち65%がフィーチャーフォンであり、スマートフォンは35%であるから、今後もスマートフォンの成長の余地は非常に大きい市場である。2014年にインドで1年間に出荷された携帯電話は約2億6,108万台だったが、そのうちスマートフォンは約8,181万台だった(それでも日本のスマートフォン出荷の2倍以上である)。

インドではまだフィーチャーフォンの方がよく売れる。その理由は安いからだ。フィーチャーフォンであれば30ドル程度で新品が購入できるが、スマートフォンでは80ドル程度必要だ。インドの携帯電話ショップやネットでは「5,000ルピー(約1万円)から10,000ルピー(約2万円)」の価格帯のスマートフォンが大人気である。最近ではインドで地場メーカーから30ドル台のスマートフォンも登場してきたことから、これからますますスマートフォンのシェアも拡大していくことが予想される。

▼インドにおける携帯電話出荷台数のうちのフィーチャーフォンとスマートフォンの推移

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(IDCインド発表資料を元に作成)

■インドでiPhoneは売れるのか?

そしてインドのスマートフォン市場で人気があるのはMicromax、Lava、Intexといった地場のメーカーである。

iPhoneの新製品が登場しても大騒ぎしているのは、アメリカや中国、日本と一部の欧州諸国くらいであり、インドのような新興国ではiPhoneの新製品が登場しても静かなものである。それはiPhoneが世界各国の市場に応じた価格設定や製品出荷をしていないので、新興国ではiPhoneは非常に高価な「高嶺の花」である。とても若者や学生が購入できるようなものではない。

また実利主義の強いインドでは中国と違って、見栄をはるために、最新の高価なiPhoneを購入するという人は非常に少ない。スマートフォンなんてどれでも同じと思っている人が多い。中古のスマートフォン市場も盛況で、安くていいものが欲しいのだ。たしかにスマートフォンでやっていることはメッセンジャーアプリ、SNS、ゲーム、動画閲覧などiPhoneでしか出来ないアプリはない。地場メーカーの格安のスマートフォンで十分である。

Appleの地域別売上を見ても、南北アメリカ(ほとんどがアメリカ)、欧州、中華圏(中国、香港、台湾)で86.7%を占めている。年間8,000万台以上のスマートフォンが出荷されるインドでも「その他のアジア太平洋地域」の扱いになっている。

インドにiPhoneの製造工場が設立されれば、インド人の雇用創出には大きく貢献するだろう。ただし、今後もiPhoneが世界共通の端末で価格帯で出荷するという戦略ならば、インドのような新興国においてiPhoneが急激に売れるようになることは考えにくい。

▼Appleの地域別売上とシェア

Appleの地域別売上に日本だけ1か国が国で出ているのはAppleにとって日本市場の重要性が伺える。

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(Apple発表資料を元に作成)