「Facebook Lite」で新興国市場を開拓したいFacebook

Facebookは2015年6月、Facebookの軽量版Android向けアプリ「Facebook Lite」を発表した。アプリのデータサイズは1Mバイト未満で「インストールやデータの読み込みが速いこと(fast to install and quick to load)」をウリにしており、2G回線でも簡単に利用できるように設計されている。また252KBの空き容量がスマートフォンにあればよいとのことで、ローエンドのスマートフォン端末を利用している新興国市場を対象にしており、新興国など高速回線がない地域の人々へのFacebook利用促進を狙っている。「Facebook Lite」はすでにバングラディッシュ、ベトナム、ナイジェリア、ネパール、南アフリカ、スーダン、スリランカ、ジンバブエの8か国でリリースされている。

■Facebook利用のほとんどはモバイル

Facebookが2015年4月に発表した決算によると、Facebookの月間アクティブユーザー数は全世界で14億4,000万人だった。世界の人口が約70億人なので、単純に計算すると約5人に1人がFacebookに毎月アクセスして利用していることになる。Facebookはもはや世界中の人のコミュニケーションのプラットフォームになり、現在でも成長している。特に既にFacebookが浸透している北米や欧州以外の地域での加入者の増加が著しい。

また、現在、世界で5億8,100万人のユーザーがFacebookをモバイルのみで利用しており、前期比で10%増えている。またFacebookへモバイル経由で1か月にアクセスするユーザー(MAU)は24%増の12億5,000万人である。Facebookはモバイルでの利用が圧倒的に多いことが伺える。

(表)Facebookの地域別月間アクティブユーザー数の推移(単位:百万人)

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(TechCrunch 2015年4月22日を元に作成)

■Facebookの収入の93%以上で、そのほとんどが北米

そのFacebookであるが、2015年第1四半期(1~3月)の売上高は過去最高だった前期を下回るが前年同期比42%増の35億4,300万ドルだった。広告事業の売上高は33億1,700万ドルで前年同期比46%増加、売上全体の93.5%を占めている。Googleよりも広告収入への依存がはるかに高い。そして広告売上高全体に占めるモバイル向け広告の比率は約73%で、前年同期の約59%から大きく拡大している。Facebookにとっては広告が非常に重要な収益の柱になっている。

Facebookの利用者1人あたりの平均収入(ARPU)は世界平均で2.50ドル。それを地域別の売上に目を転じてみると、北米での収入が1人平均8.32ドルと他よりも圧倒的に高く、欧州2.99ドル、アジア太平洋地域1.18ドルと続いている。アフリカや中南米などの新興国が該当する「その他の地域」では利用者は急激に拡大しているが、1人当たりの収入は0.80ドルと非常に小さい。つまりFacebookとしては、14億4,000万人の利用者のうちアジア太平洋地域で4億7,100万人、それ以外の新興国中心の「その他地域」で4億5,300万人と64%以上を占めている。これらの地域での広告収入の増加は、Facebookの成長にとって重要な課題なのである。

(表)Facebookの世界での地域別ARPU(2015年第1四半期)

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(TechCrunch 2015年4月22日を元に作成)

■「Facebook Lite」は新興国市場の開拓になるのか?

Facebookの新興国市場を対象にした取組として有名なのは2013年8月に、全世界にインターネット環境をもたらすことを目指す団体「internet.org」の設立だ。これはインターネットに接続できる環境にない世界の約50億人の人々を対象にした試みである。Internet.orgの設立メンバーにはFacebookのほか、サムスン、エリクソン、ノキア、クアルコム、メディアテックの各社が名を連ねている。そして2014年7月、「Internet.org」の取り組みとして、Facebookを含むいくつかのサービスをデータ課金なしで使えるモバイルアプリ「Internet.org」を発表し、まずはアフリカのザンビアで公開した。「Internet.org」では、データ通信が無料でFacebookやGoogle検索、Wikipediaの他に天気予報や生活情報サイト、求人情報などのサイトにアクセスが可能である。スマートフォンだけでなくフィーチャーフォンからもアクセスが可能で、現地の通信事業者と提携して提供している。アプリから起動するサービスを利用する場合はデータ課金されないが、それ以外のWebサイトにアクセスすると課金される仕組みである。

FacebookのザッカーバーグCEOによると、この1年間、目標実現のために世界各国の通信事業者と協力して世界で300万人以上の人がインターネットへの接続を可能にしたという。2015年5月現在、ザンビア、タンザニア、ケニア、ガーナのアフリカ4か国、中南米のコロンビア、アジアではインド、フィリピン、バングラディッシュの3か国で世界8か国で現地の通信事業者と提携して「Internet.org」アプリを提供している。

「Internet.org」は一見、慈善事業のように見えるが、これもFacebookが新興国で将来の広告ビジネスの拡大を狙った布石としての取組みである。Facebookは一人でも多くの人に頻繁にアクセスしてもらわないと広告収入の増加にならない。

「Internet.org」アプリの提供は現地の通信事業者と提携をしての提供となる。そのため、現地の通信事業者もFacebook利用に向けて積極的にプロモーションを行ってくれる。但し通信事業者との提携による提供は手間もかかるだろう。

一方で、「Facebook Lite」は通信事業者にとらわれることなく、Androidのアプリなのでユーザー自身でのインストールが必要になることから、Facebook自身が積極的に新興国のユーザーらにアピールして利用促進をする必要があるだろう。さらにそのターゲットは通信回線が遅く、ローエンドのスマートフォンを利用している新興国のユーザーであることから容易ではない。Facebookが世界中の人々に利用されるようにはなったが、Facebookがなくても生活にはほとんど困らない。他にもWhatsAppなど後発のメッセージアプリのようなコミュニケーションや情報発信の手段はいくらでもありFacebookである必要はない。また新興国ではSMS(ショートメッセージ)感覚で情報発信できるTwitterの人気も高い。

Facebookとしては新興国での利用者の増加にともなって広告収入の増加も狙っていきたいところだが、「Facebook Lite」の導入で通信回線が遅く、ローエンドを利用している人が頻繁にFacebookにアクセスするようになって、新興国での広告収入すぐに大きな成長をするとは考えにくい。広告収入に大きく依拠しているFacebookは、これからもまだまだ新興国での収入増に向けた取組みは続けなくてはならないだろう。

日本でもかつてSNSは「mixi」が大人気だったが、Facebookが登場してから、あっという間に形勢逆転された。Facebookもいつ形勢逆転されるかわからない。全世界で14.4億人がFacebookを利用していても、SNSはどのサービスも「一寸先は闇」なのである。