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4月1日から有給休暇のルールが一部変わります!

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

有給休暇5日義務化、カウントダウン!

 ここのところ、私の前に書いた下記記事が読まれ始め、有給休暇に関する取材が多くなってきました。

有給休暇5日取得義務化に伴う不利益変更にご注意!

 取材が多くなってきたのは、上の記事でも書いたとおり、有給休暇に関するルールが変わるからです。

 具体的には、年間10日以上の有休を取得している労働者に対して、有休付与日から1年の間に最低5日間は取得させないといけない、ということになったのです。

今は犯罪だけど摘発数は少ない

 私が実体験を記載した次のツイートが約1万リツイート、1万5千の「いいね」がつきました。

 このように反響が大きいところを見ると、有給休暇に対する関心が高いことがわかります。ついたコメントも様々です。

 ただ、残念ながらこういう認識を持っている経営者は、この社長さんだけではありません。なので、この社長さんだけを非難してもあまり意味はないのです。少なくない職場で、このような認識の下で有給休暇が扱われている実態があります。

あまり適用されてこなかった刑事罰

 もちろん、有給休暇を取らせなかったり、取ろうとすることを妨害すれば、刑事罰があります(労基法119条)。

 しかし、現時点では、一部の例外を除けば、有給休暇を取るのは労働者がその権利を行使することが必要です。

 そのため、そもそも権利行使をさせない雰囲気のある職場であれば、誰も申請しないので、実際には法違反状態であっても、摘発されることはありません。

 常日頃から、社長や上司が「うちでは有給休暇をやってないぞ」と述べておけば、有休を取りにくい職場づくりができるというわけです。

 統計上も、平成28年中に、労働基準監督官が司法処分として検察庁に送検した件数は890件あり、その内労基法違反が380件ありますが、この中で有給休暇に関する違反(労基法39条違反)は、たったの3件しかありません。

罰則付きの厳しい義務

 しかし、改正法が施行後は、それも変わるだろうと予想されます。

 この有給休暇5日の義務化は、違反すると刑事罰があります。

 そして、有給休暇5日取得義務は、経営者が労働者に有給休暇を取得させる義務ですので、1年間を通して労働者が有給休暇を5日未満しか取ってなければ、それだけで犯罪になるのです。

 これまで有休を取りにくい職場環境を作ってきているのだとしたら、むしろそれがあだになってしまうのです。

正社員・フルタイム労働者は新入社員でも対象

 有給休暇は、「雇入れの日から6カ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した場合、1年ごとに、最低10日を付与しなければならない」とされています(労基法39条)。

 ですので、正社員やフルタイムで働く労働者であれば、6カ月のうち8割出勤すれば10日の有給休暇を取ることができます。したがって、新入社員でも6カ月まじめに働けば5日取得義務の対象です。

 ちなみに、「6カ月」「8割」はあくまでも労基法の最低基準です。企業によっては、これより有利な労働条件を定めても、何ら問題ありません。たとえば、入社時に年次有給休暇を10日与える職場もあります。こうした職場では、その日から1年間の間に5日取得させないといけません。

パート・アルバイトのみなさんも対象!

 さらに、この有給休暇5日義務化はパート、アルバイトも対象です。

 有給休暇を10日付与される労働者であれば、雇用形態は問われないのです。

画像

 上記表の水色のところに該当する労働者は、10日以上の有給休暇が付与されます(週30時間未満の場合)。

 つまり、所定労働日が、1週間30時間に満たない場合で、週4日、もしくは、年間169~216日の労働者については、3年半以上勤務し、直近1年に8割以上出勤している場合は、法律上10日以上の有給休暇が付与されます。したがって、経営者はその付与日から1年の間に5日間の有給休暇を取らせなければいけません。

 また、1週間30時間に満たない場合で、所定労働日が週3日、もしくは、年間121日~168日の労働者については、5年半以上勤務し、直近1年に8割以上出勤している場合は、やはり法律上10日以上の有給休暇が付与されます。したがって、経営者はその付与日から1年の間に5日間の有給休暇を取らせなければいけません。

 これまでパートやアルバイト労働者に有給休暇を取ってもらっていなかった職場においては、影響が極めて大きいと思われます。

2019年4月1日からスタート

 これらは2019年4月1日からスタートします。

 大企業も中小企業も、業種・職種を問いません。

 なので、まだ準備できていない企業は、はっきり言ってまずいです。

 ただし、有給休暇を付与されてから1年の間の義務なので、2019年4月1日以降に有給休暇付与の基準日が来る職場から影響が出てきます。

 たとえば、有給休暇を毎年10月1日に付与している職場では、2019年10月1日に10日以上の有給休暇を付与される労働者全員に対して、2020年9月30日までに5日以上の有給休暇を取得させることになります。

 ですので、基準日が遅い企業は、まだ少しだけ猶予がありますので、準備するチャンスはあります。

経営者のやることは?

ごまかしはリスク

 経営者のやることは、前の記事に書いたようなごまかしをすることではありません

 休日・休暇のすり替えをして、「うまくやったぜ」と言っていると、もしこれが不利益変更として後で無効になると、多くの労働者が実は有給休暇を取れていなかったことになりかねず、その場合、刑事罰がその労働者の人数分科せられる可能性があります。

 大きな企業では、100人、200人、1000人単位になるかもしれません。

 その場合は、それだけでも大ニュースですが、罰金が30万円×人数なので、払うお金も馬鹿になりません。

 ですので、絶対に、ごまかしてお茶を濁すことはやってはなりません。

労働者へ有休取得を促すこと

 経営者が第一にやることは、有給休暇管理簿を作成し、労働者一人一人の有給休暇取得状況を把握して、一定期間ごとに有給休暇を取っていない労働者に対して、有給休暇を取得するよう促すことです。

 5日の義務も、労働者が自主的に取れば、その分、義務はなくなります。ただ、注意が必要なのは、労働者が有給休暇を時間単位でとっても、それはカウントされません。

労働者の意見を聴く

 一部、刑事罰を避けるために、さっさと有給休暇の時季指定をしてしまう、という声も聴かれますが、これだと本来は有給休暇は労働者が取りたいときに取るものですから、労働者に不満が残ります。

 ですので、早いうちに、有給休暇をいつ取りたいのかと労働者の意見を聴き、できるだけそれを尊重する必要があります。

 もっとも、1年という期間が決まっているので、時間がなくなってきた場合は時季指定をすることになります。

労働者のやることは?

 労働者がこの制度でやることはありません。義務を課せられたのは使用者だからです。

 とはいえ、こうした制度ができたことを知って、もし5日義務が実施されなかった場合は、労基署へ申告するなど、法違反がないか意識を持った方がいいでしょう。

有給休暇を取りやすい職場づくりを

 ただ、労使ともに何よりも大事なのは、有給休暇を取りやすい職場にしていくことです。

 我が国では、有給休暇の取得率が低いことがしばしば問題となります。

 これは日本特有の「みんなが働いているときに休むことへの罪悪感」が根底にあるからです。

 しかし、法改正によって有給休暇を取ることが義務化されました。

 これは、「みんなが働いているときに休むこと」が義務になったと言ってもいいでしょう。

 ですので、謎の罪悪感をもってしまう意識を変えていくいいきっかけになると思います。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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