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【残業代】消滅時効延長に反対する理由は払わず逃げきりたいだけでは?

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 みなさん。突然すみません。

 実は、民法という法律がありまして、その法律で給料の消滅時効は1年とされております(民法174条1号)。

 (^^;)「いきなりなんだよ、やぶからぼうに

 と思うでしょうが、少し読み進めてください。

 1年で時効ということは、つまり、もし給料が払われなかったとしても、1年経つまでに裁判などをしないと消えちゃうということです。

 たとえば、残業代が払われていないとき、裁判などをしないと1年前の未払い残業代は消えちゃうということです。

 (>_<)「えっ? なに? 1年って短い!

 ですよね。

 ご安心ください。

 ということで、労働基準法は、労働者が本来もらえて当然の給料の時効は1年では短すぎるということで、2年に延長してくれています(労働基準法115条)。

 (^o^;)「ああ、よかった。2年あれば普通より長いね。よかったなぁ。

 ですよね。

 さすが労働基準法、民法よりも労働者を保護してくれている。

 まぁ、それが目的の法律だから当然ですよね。

 でも、実際は2年というのも意外と短いのです。

 長時間労働していた労働者が、払われていない残業代を取り返してやろうと思った場合、会社を辞めてから請求することが多いのが実情です。

 そして、会社を辞めてから弁護士に相談して、いざ請求しようとすると、実は、一番長く働かされていたのは2年前とかそれ以上前などという話はザラにあります。

 給料の時効が2年だと説明すると、無念そうに「それより前が一番働いていたんですよね・・」という反応はよくあります。

 なので、2年でも短いんだよなぁ、と思いますよね?

 

 と、思っていたところ、実は、昨年、民法が改正されまして、

 なんと!

 

 改正により、消滅時効のところも改正され、時効が「権利を行使することができることを知った時から5年」又は「権利を行使することができる時から10年」となったのです!(改正民法166条、施行は2020年4月1日から)

 (^o^)「やった!

 ですよね~。

 当然、労働者を保護するための労働基準法が、民法よりも短い時効を定めている矛盾はあり得ないわけですから、給料の時効も5年or10年になるはずです。

 

 ということで、厚労省も「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を設置し、労基法の給料の時効を検討しはじめ、今夏には結論を出そうということのようです。

 そして、最近(2月2日)、労使双方の弁護士を呼んで、意見を聴取したそうです。

 ところが・・

 なんと、使用者側の弁護士は改正民法より短い現行の2年の維持を主張したそうです!

 (-_-;)「ちょっ、待てよ。おかしいだろ?

 と言いたくもなりますよね。

 それもそのはず、民法で債権一般が5年or10年になったのに、なんで給料だけが2年なんて短くされにゃならんのだ、と思いますよね。

 もし、これを読んでて、

 (;一_一)「いや、企業としては時効が延びると困るだろ・・

と思っている人がいたら、こういう問いかけをしてみたいですね。

 (゜o゜)?「でも、払ってなかった方が悪くね?

 そうです。

 ちゃんと払っていれば、時効なんて何年だって関係ない話です。

 なのに、なんで払ってない前提で考えちゃうのか?

 その「払わない前提」の思考回路は、通常に戻した方がいいでしょう。

 

 おそらく、あくまでも私の推測ですが、使用者側の弁護士は、残業代請求事件においてこれまで2年であった時効が5年になったら大変だ、と思っているのでしょう。私の推測ですけど。

 もちろん、私の推測ですから、そのようなことを使用者側の弁護士は明け透けに言うことはない思っていないかもしれません。

 きっと、記録の保存がどうのこうのとか、労基法の刑事罰の関係でどうだとか、ゴタク並べる理屈を述べるのではないでしょうか?

 いや、もちろん、これは私の穿った見方なので、もしかしたら使用者側で出ていらした弁護士の先生たちも、きっと何か私の想像を超えた、崇高な理論をおっしゃっているのだろうと思います。

 でも、どんな崇高なゴタク理論をおっしゃっても、そもそも賃金を法律どおり払っていれば問題ないでしょ?

 むしろ、残業代をはじめとした賃金をちゃんと払わないという事態を防ぐには、時効期間を長くして、もしも法律どおりに払っていなければ企業にとって相当なリスクがあるということを知らしめたほうがいいと思います。

 そもそも理論的に考えて、賃金の消滅時効だけ、労働者を保護するための労基法で民法より不利にするという意味がわかりません

 なのに、あくまでも時効は2年にこだわる理由があるとしたら、残業代を払わず逃げきりたいということだとしか思えないのですが、みなさんはどう思われますでしょうか?

 これは、実はかなり大事な問題ですので、議論の推移をご注視いただければと思います。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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