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【ブラックバイト】欠勤1回につき罰金3万円!~これは払わないといけないのか?

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
給与より罰金額の方が高い給与明細書(首都圏青年ユニオン神部紅委員長提供)

先日、首都圏青年ユニオンの委員長の神部さんとブラックバイト対策の講義をする企画がありまして、その際に神部さんから寄せられた一つの事例を紹介します。

※講義の模様は末尾に動画を載せますので、興味のある方はどうぞ。

実際の給与明細書

まず、画像をご覧下さい。

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これはあるポスティング会社でアルバイトをしていた方の給与明細書です。

注目点を拡大します。

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さて、分かりますでしょうか?

注目すべき点を赤で囲みました。

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そうです。

この会社は、無断欠勤1回につき、3万円を罰金としているのです。

無断欠勤1回につき3万円の罰金?!

この給与明細書によると、2回無断欠勤をしたとして、6万円の罰金が科せられているということになります。

ちなみに、この事案では、アルバイトの人は病気になったので休むことを上司に言ったのですが、伝達ミスで社長に伝わらなかったことで、無断欠勤とされているということのようです。

もっとも、もしも実際に無断欠勤していたとすると、1回につき3万円を支払う義務が労働者に発生するのでしょうか?

ちなみに、このアルバイトの方は、時給1000円、日給7000円ということのようです。

果たして、時間にして30時間分、日給にして4日分以上の罰金を支払う義務があるのでしょうか・・・。

結論から言うと、この罰金は払う必要はありません。

そもそも、1回欠勤すれば欠勤控除というものがなされます。

要するに、働いていないので賃金が発生しない、というものです。

これを超えて、労働者が使用者に金銭を支払う合理性は全くありません。

ちなみに、懲戒を定めている企業では、減給の制裁というものを設けている場合があります。

この場合でも、「その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」(労基法91条)と定められていますので、そもそもお金を払わせるということ自体想定されていない上に、時間にして30時間分、日給にして4日分以上の罰金を支払う義務なぞ、もとよりあり得ないということになります。

ブラック企業、ブラックバイトに横行する「罰金」制度

ところが、いわゆるブラック企業やブラックバイトと言われる企業においては、この「罰金制度」が横行しています。

遅刻1回で5000円とか、欠勤1回で1万円などがよく見る罰金制度です。

しかし、こうしたものは基本的に無効であると考えて差し支えないでしょう。

何も分からないと、「自分が遅刻したのが悪いから・・・」「欠勤して店長に迷惑をかけたのだし・・」などの心境から、つい払ってしまうようです。

働く側も、知識という武器を持つ必要があります(※無料でいろいろ勉強できるものをまとめているので興味のある方は下記記事をご覧下さい。)

「ブラックバイト」について無料で学べるものをまとめてみた

なお、この企業では、この労働者に対し、2万8000円の請求をしているそうです。

つまり、「給与32000円-罰金60000円=-28000円」ということのようです。

給料を払わない上、さらに金も払えというわけです。

馬鹿も休み休み言え、という感じですね。

この企業の求人は、こういうものでした。

画像

ちょっと見にくいですが、

ユニークな手当がいっぱいです!

各種手当充実!

と書いてあります。

たしかに、こんな馬鹿げた罰金制度はユニークではありますが、こんなものを充実させてもらっては困りますね。

罰金制度のある会社はブラック企業と思え

このような罰金制度のある会社は、高確率でブラック企業と言っても過言ではありません。

もし勤務先にこのような制度があるならば、罰金を取られる前に労働組合や弁護士、労働相談をやっているNPOなどに相談することをお勧めします。

相談先

首都圏青年ユニオン

ブラックバイトユニオン

NPO法人POSSE

ブラック企業被害対策弁護団

日本労働弁護団

など

講義の動画

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弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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