ABCマート略式起訴!!しかし、罰金50万円。~罰金額はこのままでいいのか?~

ある靴屋のセール風景(写真:ロイター/アフロ)

ABCマート、略式起訴される

先日、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)が最初に摘発したケースであるABCマートの違法労働の件が略式起訴されました。

「ABCマート」違法残業で運営会社を略式起訴 東京区検

ただ、他の例では、一生懸命に労働基準監督署が捜査して送検しても、略式起訴さえされないケースも多々あります。

ですから、略式起訴まで持ち込めたことは評価すべきことだと思います。

ただ、その罰金刑が50万円です。

たしかに、ABCマートなど、「かとく」に摘発された企業はニュースになり、社会的制裁を受けるという側面はあります。

しかし、罰金額という面では、これだけの企業規模からすると、50万円払っても痛くもかゆくもないというのが実際でしょう。

「じゃあ、もっと高い罰金刑を科せばいいじゃないか」

と思うかもしれませんが、法律で決められている以上の罰金を科すことは許されません。

今回のABCマートの送検は、労働局の送検事例というHPを見ると、労働基準法32条違反のようです。

労働基準法32条は、1日8時間、1週40時間を超える労働を禁止しています。

ただし、例外があり、労使が協定した時間の範囲内であれば上記時間を超えて労働をさせてもいい、ということになっています。

ところが、ABCマートはこの協定がない店舗で時間外に働かせたり、協定がある店舗でもその協定をした時間を超えて働かせていたわけです。

したがって、労働基準法32条違反ということになります。

違法な時間外労働の罰金額は?

では、この労働基準法32条違反の罰金はいくらでしょうか?

この32条違反については、労働基準法119条1号に罰則が定められており、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」とされています。

このうち「懲役」は法人には適用できないので、罰金が当然に選択されることになりますが、上限はたったの30万円であることが分かります。

今回、50万円とされているのは、おそらく2店舗分の違反が送検されていましたので、2店舗を併合した刑ということになるのだろうと思います。

罰金刑の併合は、それぞれの罰金刑の上限を足し算した額が言い渡すことのできる刑としての上限とされます。

今回は2店舗ということですから、30+30=60万円が上限だった、ということになるのです。

なので、10万円安くしてもらってるようです。

罰金額を引き上げた方がいいのではないか

さて、大企業はもちろん、ある程度の事業規模の企業において、30万円の罰金って怖くないですよね。

その意味では抑止力としては不十分と言わざるを得ません。

かつて、私の依頼者が、残業代不払いについに怒り、勇気を出して社長に「労基署に言いますよ!」と言った方がいました。

ところが、その社長は「労基署に行っても30万円払うだけだ!」と居直ったそうです。

ブラック企業のように、違法行為を堂々としている企業では、労基署にばれた場合でも罰金刑で済む、大したことない、と思っている人が少なからずいるということです。

労基法の罰則で、一番高い罰金は強制労働の禁止に反した場合の「二十万円以上三百万円以下の罰金」です。

下限が決められている点や上限も300万円と、他のものより高く設定されています。

他は上限が30万円と50万円です。

労基法を離れて、法律全体を見渡すと、罰金刑で高いものでは7億円(!)というものがあります。

金融商品取引法207条ですが、虚偽記載をしたような場合の法人に対する罰金です。

動くお金や社会的影響が大きいだけに、高い罰金が設定されているようです。

労働関係において、7億円という罰金がふさわしいかどうかは議論はあるでしょう。

しかし、少なくとも現在の30万円とか、50万円とかの罰金では、あまり抑止力になっていないものと思います。

労基法の罰金額の引き上げについて、法改正を含め、国会で真剣に議論してほしいと思います。

*なお、賃金不払いの場合は、「その犯意が単一であると認め難いときは、支払を受け得なかつた労働者各人毎に同条違反の犯意が形成されているものと認められる」という最高裁決定(昭和34年3月26日決定)があるので、たとえば100人に不払いがある場合では、30万円×100となり、3000万円まで罰金を科すことが可能となります。