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パラ水泳世界選手権のチケット完売寸前! ロンドンで繰り返される「リバース・エデュケーション」とは

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
レガシーの中心となる会場で9日からパラ水泳世界選手権が始まる。 筆者撮影

 ロンドン2012パラリンピックのレガシーを代表する「ロンドンアクアティクスセンター(水泳会場)」で9月9日に始まるロンドン2019パラ水泳世界選手権のチケットが販売されているが、大会3日前の現時点(9月6日)で全ての「予選」チケットが売り切れ、「決勝」も含めて多くの日が完売となっている。

 予選から先に完売していることに対して会場のスタッフに尋ねると、「たくさんの学校から子供たちが集まるんですよ。だから昼間から売れるんです」と話していた。

 決勝が肝心なのではないか?と心配する声が上がりそうだが、2012年ロンドンパラリンピックでのチケット完売のエピソードがその心配がないことを証明してくれるだろう。当時、フィリップ・クレーヴァンIPC(国際パラリンピック委員会)会長が提唱していた「リバース・エデュケーション」が功を奏したのである。

 つまり通常の教育とは大人から子供へ与えられるが、2012年ロンドンにむけてその逆を想定。学校でパラリンピックの授業を受けた子供たちが親(大人)へパラリンピックの魅力を伝える戦略が図られたところ、結果としてパラリンピックの観戦客が増えチケットが完売、観戦客の7割が親子連れであったという結果がもたらされた。このことは東京2020でも大いに参考にされている。今大会も同様な成功を収められる可能性が高くなっている。

ザハ・ハディドによるロンドン・アクアティクスセンター外観。クイーンエリザベス・オリンピックパークの中心にある 筆者撮影
ザハ・ハディドによるロンドン・アクアティクスセンター外観。クイーンエリザベス・オリンピックパークの中心にある 筆者撮影

 美しい存在感を保ち、オリンピック後もロンドン市民に愛されるアクアティクスセンターは、バグダッド出身の建築家で惜しくも2016年に他界した故・ザハ・ハディド氏による作品。160メートルのユニークな曲線を描く屋根を持ち、クイーンエリザベスパークの主人公として行き交う人々にクリエイティビティの活力をもたらして輝いている。ここに、世界80の国と地域から650人の障害のあるスイマーがつどい、2年に1度の最高峰の闘いを待っている。

<参考>

公式情報(IPCスイミング)

https://www.paralympic.org/london-2019

公式情報(プリティッシュスイミング)

https://www.britishswimming.org/london-2019-world-para-swimming-championships/

(取材:PARAPHOTO2020取材準備室)

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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